QLOOKアクセス解析

白い薔薇によせて



いらしゃいませ。現在の閲覧者  名さま

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


拍手ボタン

「SS (二次創作小説)」
超時空要塞マクロス 第一部

喪失

 映画「愛・おぼえてますか」でフォッカーが「おい、早瀬」と言ってるのが好きです。TV版は未沙と距離があるように見え、軍人としても上手の彼との親しいやり取りが見たかった。クローディアとの息の合った大人カップルぶりも見たい ―― そんな思いで書きました。

「第16話 カンフー・ダンディ」で未沙がダイダロス・アタックを失敗して、自室へ戻った後です。

「 分からない、何もかも。分かっているのは、カイフンがライバー少尉じゃないってことだけ …… 」
未沙は自室で頭を抱えて、苦悩した。
2011.7.25 UP
2012.2.24 改訂


カイフンと一条輝の言葉が、頭の中で何度も繰り返される
  『 戦いは、何も生み出しません 』
  『 何機落とせば敵は来なくなるんですかっ !? 』

父の声が重なる
  『 敵の注意を引付けてくれ。危険だが、時間稼ぎをしてもらおう 』

娘々の客達の非難
  『 貴様らのせいで、俺達は土地を失ってしまったんだ! 』

( 何のために戦えばいい? いつまで戦わせればいいの …… ? )

一人前の軍人になろうと、青春を駆け抜けた自分。軍人としての責務を果たそうと、己をけて来た私。 
その行き着く先は ――

『 戦いのもたらす物、それは破壊だけです 』


「 ライバー ・・・ ! 」

 写真立ての想い人に、救いを乞う。いつも心の文通を交わしたその人は、ただ優しく知的な瞳を向けるだけだ。写真の彼は士官になる前の17歳の少年で、今の自分は ―― 気が付けば19歳の大尉になっていた。 

「 ライバーはいないのよ。もう、何も言ってはくれないの 」

死とはそういう事だと、軍人の血と大事な人を亡くした心がわかららせてくれていたはずだった。しかし大切な存在の喪失感は、繰り返し繰り返し、何度も未沙の元に訪れるのだ。

( 私はこんな思いに、1人で耐えてゆけるの …… ? )

その答えを未沙の心の奥深くは、「NO」と言った。




 未沙が行きつけのバー MICRO COSMOS に入ると、クローディアとその恋人が待っていた。

「 フォッカー少佐もいらしたのね 」
「 ああ。お邪魔だったかな? 」
「 いいえ。私の方がお邪魔だったのでは? 」
「 いや、俺が一緒に飲みたいって言ったんだ 」
「 そうですか …… 私に何かお話があるんでしょうか 」
「 まあそうかしこまらずに、まずは1杯やろうじゃないか 」

未沙は席に座ると膝にハンカチを被せ、オーダーする。グローバルから休息を指示された翌日である今日は非番で、未沙は一日横になって過ごした。そこへ心配したクローディアから呼び出され、その後が気になった彼女は出て来たという訳だった。

「 未沙、少しは休めた? 」
「 ええ。お陰さまで 」
「 早瀬はここの所働き詰めだ。君の代わりがいないからなぁ 」
「 後進育成も大事な任務、と理解してるつもりなのですが …… 」
「 こう実戦ばっかりじゃ、俺も怖くて上手くいかん 」

軍の威光と期待を背負った最新鋭の戦艦マクロスは、当初は中堅からベテランばかりで構成されていた。しかしフォールドをきっかけに入隊してきた者は全くの新人が多く、新旧入り混じる戦闘は相撃ちの危険すらあった。

「 ちゃんとお育てになってるじゃありませんか …… 一条中尉とか 」
「 アイツは元々飛行機乗りだし、勝手にやってるよ 」
「 この度はすみません。私のミスで 」
「 ちゃんとけた奴もいるんだ。アイツも悔しがってるだろうよ 」

フォッカーは輝が救助されてすぐに見舞いに行ったが、先程意識が回復したと報告を受けていた。打撲程度で大した怪我でもないが、頭部だった為に用心で数日間入院の予定だ。きっとすぐに退屈するだろう。近い内に何人かで見舞いに行って、シケたツラでも拝んで来ようと仲間内で話していた。

「 でも …… 」
「 なあ、早瀬。何でも抱え込むな 」
「 別に抱えてなんかいません 」
「 お前はミスをした。アイツは未熟だった。それだけだ 」
「 私情にとらわれてミスをしたんです 」
「 任務中に私情なんぞ、当たり前だ 」
「 …… 」

早瀬未沙の端正な顔の中に、フォッカーは揺るがない意思を見た。しかしそれは時として “ かたくなさ " とも言う。

「 自分を許せよ。おかしくなっちまうぞ 」
「 …… 」
「 ふ~っ …… お前、男はいないのか? ―― いないよな 」
「 すみません 」
「 いたら、そうも苦労しないだろうに 」
「 ロイ 」

クローディアの制止も聞かずに、彼は話続ける。フォッカーは早瀬未沙の指揮能力を高く評価していたし、期待もしている。ただ彼女には、基本的かつ重要な事が欠けていた。今まで小出しに話してきたが、恐らく通じていないだろう。軍人としての根底が揺らいでいるこの時にしか、この生真面目で優秀な女性士官が受け入れるチャンスはないと思う。

「 男の優しさも、たまには必要だ 」
「 ロイ! 」
「 お前は正しい。いつも分かっている。しかし人間は正し過ぎる事に対しては委縮するか、反撥するか、だ。お前は裁いてるんだ。自分をゆるせない奴は、人に赦しを感じさせられない。お前の優秀な頭は、自分で自分を受け止められるのか? 」


「 ロイ! いい加減にして! 」
「 私、失礼します …… ! 」

 未沙は顔をうつむけて、店を出て行った。立ち上がってしまったクローディアはフォッカーを睨み、彼女を追おうと身支度を整える。

「 未沙が今どんな状態か、あなたにも少しは想像つくでしょ 」
「 ああ 」
「 彼女をこれ以上追い詰めないで頂戴。男と女は違うのよ 」

クローディアは断片的にであったが、未沙の過去を聞いていた。しかし親友の心の奥底を、恋人と言えど話す彼女ではない。柔らかな心が傷付けば、女は己との戦いに発奮はっぷんするよりも、守る為に怯えるだろう。

「 だから俺が言って、お前が居るんだろ 」
「 今日は帰らないわ 」
「 お前の親友と、俺らの大事な指揮官殿をよろしくな 」
「 当たり前じゃない。どっちも私の生命線よ 」
「 オイオイ。じゃあ、俺はお前の何だよ 」

クローディアは口の端で鮮やかに笑むと、未沙が残したハンカチを拾って足早に店を後にした。

「 やれやれ。やっぱり今夜はひとり寝か 」



 クローディアが部屋を訪れると、未沙は憔悴しょうすいした顔で迎えた。ハンカチを差し出しながら、中に入る。

「 大事な物をお忘れよ。涙を拭くハンカチと、親友のアタシ 」
「 …… クローディア 」

クローディアは部屋入ると未沙をソファーに座らせ、家主には聞かずに飲み物を用意する。

「 これでも飲んで、アイツの言った事なんてお忘れなさい 」
「 ありがと 」
「 ホント男って、デリカシーがないんだから 」

クローディは暖かな紅茶にブランデーを多めに入れて未沙に手渡し、隣に座って大袈裟に呆れたポーズをとって見せる。未沙は両手でカップを包んで、透明な赤に目を落としながら親友に尋ねた。

「 ねえ、クローディア 」
「 なぁに? 」
「 …… 男の人と愛し合うって、そんなに必要なこと? 」

未沙にはフォッカーが言いたい事が、なんとなく分かった。誰かを愛し ・ 愛される経験が、自分を赦せる事につながるのだと。誰かが素のままの未沙を愛しんでくれるなら、私も自分を愛せるかも知れない。もう充分に大人と言える女がそれを求めるならば、相手は友人や親ではなく、男性なのだろう。
―― 本当は以前から分かっていて、わかりたくなかった事。

「 あんな男でも “ いなきゃ生きてけないかも ” って思う位にはね 」
「 そう …… あなた達を見てれば、分かるわね 」
「 そうでもないわよ 」

マクロスの乗員訓練選抜センター時代から、未沙は2人を知っていた。出会った時には既に恋人同士だった彼等に、甘い雰囲気を見た事はほとんどなかった。しかし彼と彼女が並べば誰から見ても恋人同士だと分かる ―― そんな2人だった。

「 私は、男の人に愛されたことがないから 」
「 未沙 …… 」
「 自分の事が、こんなに、分からなくなるなんて 」

未沙はカップを置き、両手で顔を覆った。指の間から苦し気な息が漏れる。

「 どうしたらいいのか、分からないのよ 」
「 お泣きなさい。私じゃ役不足だけど 」
「 ライバーはもう、私の心にしかいない 」
「 …… 」
「 心の中のあの人だけで、私は生きていけるのかしら …… ? 」

 愛しい男を無くした事がないクローディアには、掛けられる言葉が見つからなかった。本当は優しく感受性が豊かな未沙だが、いつもどこか張りつめた空気をまとっていた。そんな彼女には恋人が必要だと思ってはいたが、過去を知ってしまえばフォッカーのように露骨には言えなかったのだ。

「 心に穴があっても、命は消えてくれないのよ …… ? 」

精霊流し
喪失

大切な人達の存在を、信頼する父への陰りない愛情を失って、未沙の心にも穴が開いた。幸福も喜びも、みなその穴から流れ出てしまう。しかしそんな空虚な器になってさえ、若い未沙の命は燃え尽きる事は無い。


 未沙の脳裏に、遠ざかってゆく火星が霞む。運命に導かれるようにして出会ったライバーの部屋で、最期は彼と一緒にいられると思ったあの日。生者に引きずり出された未沙は、そんな自分の弱さとサヨナラしたはずだった。だが ――  

「 私は、これから何度失うの? 」

ふとした瞬間に訪れる喪失感は、何度っても慣れる事は無い。再び新たな喪失を経験すれば、もう耐えられないと思う。だから誰かを愛する事が怖い。愛されるのも怖い。自分にも他人にも心を許せば、また誰かを想ってしまうかも知れない ―― しかし今 未沙の心を占めるのは、誰かを深く愛したいという求めだった。

そしていつか、父の名付けの願いのように、人々を慈しむ幸せを ・・・・・・

未沙
いまだ えらばず ―― いつまでも広い心を持って健やかに

終わり

あとがき

冒頭の場面が印象的で、ずっと話にしたかったのです。多くを失った未沙の気持ちの解釈は難しいですが、何とか一通りの形にしてみました。恋に前向きになった未沙は、このあとカイフンにバレンタイン・チョコまで用意する(TV版 美樹本氏のイメージ・ボードより)と。

フォッカー
TV版小説を参考にしました。陽気で熱く、本当は知的で哲学的、ペミシストの設定。未沙が何故 “ 鬼 ” と表現されるか少し出したのですが、こんな未沙に彼はそこまで言及しないだろうとボカしました。

ライバー
彼の設定は小説「早瀬未沙 白い追憶」が基本で、未沙が13歳の頃に17歳で知り合いました。彼は未沙を妹のように思っていただけで、片想いです。TV版の幼馴染で恋人だった設定も魅力的でしたが、今まで小説を元に描いてきましたし、後々を考えて選択しました。あの小説は1ヶ所を除いてとても好きで、あの世界を大事にしたいのです。

未沙の名前の由来は、ムック本「マクロス・グラフィティー」の「未沙のアルバム」より

BACK 「Coffee & Milk Tea」
NEXT 「夕焼け」
未沙が鬼と言われた理由 → 「かなし かなし と云う心」
もうすぐ1人じゃなくなるよ!
スポンサーサイト
拍手ボタン

 Comment 

Re: クローディアとフォッカーの絶妙なコンビネーション 

こんばんは。お言葉に甘えて、頂いたコメントをSSやマクロスを楽しむ為に活用させて頂きマス (^^) 

連理の枝
楊貴妃ですね。このカップルには、オトナのコンビネーションを見せてくれる事を期待します。比翼はマックス&ミリアとは、ウマイ!ですネ。

フォッカーは、実は繊細
大胆な言動をとるけれど、表にしない細やかさを感じますよね。実は彼の生い立ちや最期のSSも考えておりまして、いずれご披露出来れば //////

未沙について、本人よりもよく分かっている事が多いのでは
女心的な部分は限度がありそうですが、人生や軍人等の広い視点での理解は有りそうですよね。作戦会議等や部署間で対立する場面なんか、面白そう。この2人のやり取りを、もっと見たかったです。

フォッカーは「今だ」という機を見るのにもたけている
直観と見えて、実は経験と深い洞察から来た瞬時の判断。e-260「う゛~~。カッコイイ!」

長生きすればするほど、どんどん失ってしまう
親や配偶者などとの永遠の別れが、いつか誰にもありますよね。それが怖くて、大切な人を得る事に臆病になる。生きてゆく覚悟が、まだ出来ない。多感な時期に受けた別れの傷は深過ぎて、1歩踏み出す事に怯える未沙でした。

未沙パパになった気分
リアル世代なら、そうでも可笑しくない年齢差ですよね。サスガ、30周年アニメ! 一緒に乗り越えてくれる人がいるならば、悲しみも成長につながると思います。

三人それぞれの人となりがわかって、自然に面白く読めました
ありがとうございます。気が付けば、このSSの初コメを頂戴しましたね! 未沙のターニング・ポイントを描いたSSで、キモだと私的には思っていましたので、嬉しいです。今読んでみると、表現がちょっと解り難いなぁ・・・ではありましたが。e-68「では~」

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます
コメント投稿覧
レス(お返事)は数日中にさせて頂きます。現在、トラック・バックは受け付けておりません
 公開する場合、コメント下「URL」からリンクが可能になります
 レスを非公開でご希望の場合、その旨とアドレスを記入下さい

 半角英数 設定すると、投稿後に修正・削除が可能です
 管理人のみに表示:  チェックすると、記入内容全てが他の閲覧者には見えません
 ※ 現在、非公開コメントの投稿は可能です
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。