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白い薔薇によせて



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「SS (二次創作小説)」
空白の二年間

鬼の早瀬少佐

 大戦から少し経過した後の軍の様子と、未沙の優秀さ。輝が未沙に対して、見る目を変えていく過程が描きたくなりました。

 ボドル艦隊との決戦が終結して、およそ2ヵ月が経った。滝のように降り注ぐ豪雨や、地上戦は終息した。そして上陸が許可された市民たちは、クレーター内に擱坐かくざしたマクロスを中心に、再び新たな都市を作り上げつつあった。

~ 「MACROSS PERFECT MEMORY」より ~



荒野を飛ぶVF-1S
2011.7.21 UP
2011.9.22 改訂


 今日も地球上での生存者探しに明け暮れた輝は、重たい心と疲労した身体を引きずって指令センターに行く。決戦の際にブリッジの損傷がひどかったために新たに設けられたセンターは、すでに順調に運営されいていた。

「 早瀬少佐。はい、今日の報告書 」
「 お疲れ様です ―― そう、1名 」

 彼女はざっと目を通し、ふと気になった点の詳細ページをまくって目を細め ―― 見入った。パトロール報告書の生存者欄は、発見場所や人数、発見時の状況で特記すべき事柄などの、大まかな情報を記載する。中隊長の輝は、各小隊から提出された詳細なものを元に、この報告書をまとめていた。そしてそれら書類のつづりを指令センターの未沙に提出し、早急に対応すべき点などがあれば口頭で伝えるのである。


 輝は早瀬少佐の応答を待つ間、そっとため息を吐く。未熟な組織、突然の管理業務の拡大、慣れない事務作業。疲労は、既にピークに達していた。

  ( 何だかすごく、疲れたな ) 
  ( その上、今日の事ときたら …… )

「 もう、この子は病院へ? 」
「 はい。救急ヘリを待つより早いから、僕が連れて行きました 」
「 どんな様子? 」
「 目立った外傷はありませんが、衰弱がひどくて 」


 そう、グッタリしていた。しかし、それだけではなくて ――

「 …… 精神的には? 」
「 一言も話せなかったから …… でも多分、かなりショックを受けていると思います 」

 少女の目はうつろだった。輝が知る限り今までは救助が来ると、皆どんなに衰弱していても何らかの反応があった。それは目の動きであったり、うめき声でだったり程度でも、だ。

「 無理もないわね …… 」
「 まぁ、そうですね …… 」

 少女は母親らしい女性と、シェルターの奥の崩れた一角に閉じ込められていた。輝が発見した時には、母親はすでに事切れていた。死後数日といった所だろう。その間、少女は母の亡骸なきがらと2人きりで真っ暗な中を過ごしたのだ。輝が自分のバルキリーに乗せる為に少女を抱えようとした時、あの子は弱々しいながらも拒否した。「一緒は無理だけど、お母さんも俺の仲間に連れてきてもらうよ」と輝が説得して、やっと身体の力を抜いたのだった。


 報告書に目を落としていた早瀬未沙が、顔を上げた。彼女は無表情ではあったが、輝はその瞳に痛みが宿っているのを感じる。そしてその瞳は、輝の心にも向けられた。

「 あなたも病院へ。そのまま帰宅しても結構です。今日はこちらも落ち着いていますから 」

 決戦以降、軍を辞める者、「復讐を!」と飛び込んでくる者、月面アポロ基地から引き揚げてくる者 ―― 日々人員が変動し、組織と言える状態ではなかった。現場の輝も指令センターの未沙も、部署の枠組み等なく入り乱れて、混乱の収束と指示系統の再編に奔走ほんそうして回ったのだ。

 早瀬未沙の目は輝の腕に注がれていた。少女を救助した時に飛び出した鉄骨に腕を引っ掛けて、パイロットスーツに血が滲んでいた。


 そこへ別の中隊長が入って来た。彼は漂う空気に気が付かずに、報告書を手渡しながら未沙に笑顔で言う。

「 早瀬少佐! この度は、ご昇進おめでとうございます 」

 彼の明るい声は、この場に空虚に響いた。

「 ・・・ ありがとうございます 」
「 ラサール少佐と並び、マクロス初の女性佐官! すごいですねえ 」
「 単に上になる者が、いないだけですわ 」

 4月に新・統合政府の設立が承認され、5月1日の発足が確定されたのに伴って、軍も再編された。マクロスで昇進した者は多かった。佐官以上の者達は昇進式への出席が義務付けられており、それは軍広報により人々に大々的に報道された。だから未沙は彼のように祝う声を、当然多く掛けられていたのだっだ。


 年長の彼に対して未沙の言葉は丁寧だったが、声は硬い。輝と未沙の何となく重苦しい雰囲気を感じた彼は、早々に立ち去った。

「 そう言えば、あなたも大尉ね 」
「 上になる奴が、いないだけです 」
「 ふふっ ―― この年で、大尉だの少佐だの。こんなご時世じゃなきゃ、あり得ないわ 」

 軍は大戦により、一瞬で多くの将官らを失った。残ったのはアポロやシェルターにいて奇跡的に助かった、わずかな者達だった。そして、このマクロスのクルー ―― 生き残った者には、多くの果たすべき義務がある。

「 早く病院へ。外は今、どんな病原菌がいるか分からないわ 」

 早瀬少佐は話している間にも、他の中隊長達の報告や指令センター員からの相談など次々と対応する。彼女はそのどれもに対し、了解したり短く的確に指示を出す等していた。


 輝は上官の言う通り、病院に向かった。

  ( 少佐も休みなんかとれないはずだ。それなのに疲れも見せず、次々と …… 。すごい人だ )

 輝は、かつて早瀬未沙を “ 現場を知らない、頭が固いウルサイ女 ” と思っていた。それは彼女がと言うより、輝が自分の持っている軍人の上官像を重ねていたのだろう。「女のクセに無表情で、うるさく命令してくる」その話し方だけで頭ごなしに言われている気がして、無性に腹が立った。女の子というのは、可愛くてコロコロとよく笑って ―― そう、ミンメイのような子を言うのだ。

 そんな輝には、早瀬未沙のような女性は初めてで。だから輝にとって、かの女性士官は “ 女の子 ” ではなかった。パイロット仲間が「士官学校首席の中尉は鬼より怖い」と言っているのを聞いて、誰なのか聞かなくてもすぐにピンときた。

  ( 頭でっかちで、ウルサくって、すぐに怒る。イヤな女 …… ! )


それが今では ――

冷静な様子にこちらも落ち着いて任務に当たれ
命令調の短い言葉は的確な指示となった

すぐ怒り出すうるさい口はこちらを心配する気持ちを含み
見せない表情とは裏腹に見つめる瞳が隠し切れない心を語る


 指令センターは、各部署の上位に位置するのではない。しかし軍のほとんどの事柄が、ここを経由して流れている。そのセンターの実質的にはトップとも呼べる未沙は、膨大な情報や指示を全て把握していると言えた。新 ・ 統合政府の初代最高責任者には、グローバルが任命される予定だ。その彼の右腕として抜擢されたクローディアの後も引き継ぎ、彼女は各方面から頼られ、多忙を極めている。

 早瀬未沙は現在の軍で、最も頼れる女性となっていた。

「 俺も負けていられないな 」





「 隊長 ・・・ ちょっと、いいですか? 」

 小走りで病院に向かおうとした所を隊員の1人が呼び止め、輝は彼に続いてパイロット控室に入った。隊長と言っても、ほとんどの隊員が輝より年上だ。この隊員も、確か5歳ほど年上だった。

「 お ・ 俺、何だかもう嫌になっちまって …… 。今日だって ―― 」

 こんな訴えは、別に彼に限ったことではない。輝は今まで、何度も聞いてきた。みんな昼夜働き、休みもままならずに疲労していたのだ。しかし救助を求める人々を思い、必死に捜索を続けてきた。

 入り口を大きく破壊されたシェルターで、瓦礫を必死で除け続けた。やっとたどり着いた分厚い鉄板を焼き切り、飛び込んだ先で ―― 人々から罵声を浴びた。1カ月以上に及ぶ閉鎖空間での先が見えない生活で、市民の心は荒んでいたのだ。

 だから輝は、彼のこんな気持ちが分かる。しかし今は、その気持ちに引き()られてはいられないのだ。輝は彼の気持ちを認め、自分もそう思ったことがあると伝え、そして叱咤(しった)し。最後に、彼に24時間だけ休息を与えた。

 こんな時、輝は早瀬未沙の目を思い浮かべる。“ 鬼 ” と評された、揺らがない強い瞳。それに襟を正され、輝も心を鬼にし ―― そして、自分自身を叩くのだ。





 輝が病院に着いたのは、既に日が暮れた時分だった。治療を終え、気になっていた少女の病室に向かう。輝の腕の傷は大したことがなかった。大きくもなければ、出血もスーツが裂けた所に滲む程度だ。さっきの隊員も気が付かず、自分の事をまくし立てていた。

 案内された、ナース・ステーションに近い4人部屋に入る。重症者が入る事が多いこの部屋は、白い壁と電灯がどこか怖い感じがした。少女はベッドで通路に背を向けて丸まり、ぼんやりと壁に目を向けていた。

 何が見えるのかと視界をたどれば ――


白いクマのキーホルダー


枕元に置かれた、小さなクマのキーホルダーだった。




 輝は1週間後、抜糸のために再び病院を訪れた。

( あの子、どうしてるかな …… )

 部屋が移って6人部屋になり、そこからはおばさん達の笑い声が聞こえる。少女のベッドは窓側で、明るい日差しに真っ白なシーツが眩しかった。あざだらけの細い腕に刺さった点滴が、痛々しい。彼女はやはり横になっており、輝が来ても反応しない。しかし窓に背を向けることはなく、両手であのクマを握っていた。枕元にはピンク色のカバともゾウともつかぬ縫いぐるみが コロンと転がっている。

かたわらの台には桃色の小さい花が1輪、グラスに活けられていた。


窓辺のコスモス

「ミントBlue」


  ( この花 …… )

 輝はかつて、この花をもらった事があった。大地が破壊された今、こんな小さな花でもマクロス周辺ではお目にかかれないはずだ。


 同室のおばさんが、気軽に輝に声を掛けて来た。

「 キレイなお姉さんだったよ。“ ちょうどいい花瓶がなくて、ごめんね ” って、グラスもくれてね。その子、夜になると泣くんだよ。だから怖い夢を見ないように、ってバクの縫いぐるみをくれたんだよね 」

 女の子は何も返さなかったが、クマのキーホルダーをギュッと握った。検温に来た看護師が聞きつけて、話を引き継ぐ。

「 あの人ね! 部屋を移したのも、彼女に言われたからよ。この子ご飯も全然食べないし夜も眠れないから、ナース・ステーションの近くにしたけど。こっちの方が賑やかで、いいみたいね 」
「 女は女同士。オッサンと一緒の部屋じゃ、おちおち寝られやしない。この子は あたしらが、面倒見てやるよ 」

  ( あの女性ひとだ )


この花を、見舞いにくれる人
この花を、手に入れられる人
普段は嫌う特権も、弱った命のためになら使う人


 鬼とも言われたあの人は ――


♪ みーつけたぁ ~ !

スイトピー 「ほのかな喜び」 「優しい思い出」 「門出」


 1人で隠れんぼしていた少女が、振り向いて嬉しそうに はにかんだ笑顔を見せた気がした。


おわり
あとがき
病室にあったピンクの花は、TV第18話で未沙が輝のお見舞いに持って来たのと同じ(つもり)です。2人が認め合って仲良くなる過程が、TVでは今ひとつ見れなかった気がします。この辺は、頑張って書いていきたいツボです。

家族ものSSを書いてほのぼのしていると、時々非情なお話も書たくなります。非情 ―― 都合よく綺麗に作った世界観ではなく、現実的な設定と包み隠さぬ表現は好きですが、救いがないのはツライので嫌いです。

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