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「SS (二次創作小説)」
空白の二年間

After The war ―― 2ヶ月

 SS「After The war ――  1ヶ月」から、約2ヶ月後までです。その頃の地球の状況と、輝 ・ 未沙の心境を描きます。


「 我々はここに、長きに渡った宇宙大戦の終結を宣言する 」


ワーーーッ !!!


 グローバルの宣言に、会場全体から帽子が舞った。青空を飛び交う旧・統合軍のそれは、新しい時代の幕開けを象徴しているかのようだった。

空を舞うドレスキャップ

by BL1961
イメージで、画像は米国空軍士官学校


ここに今、新紀元が始まったのである

2012.5.2 UP


 輝は超高層ビル街だった瓦礫の上を、ゼントラーディーの大型輸送艦1隻とバルキリー隊を引き連れて飛んでいた。高温で溶けた鉄筋は、降り続いた雨で腐食が進み、薄気味悪い姿を晒している。

 指令室に連絡を入れると、応対はヴァネッサ少尉だった。戦闘が落ち着いてから早瀬大尉には他の仕事が入り、代わりに彼女が対応する事が増えた。

「 こちらスカル・リーダー。現地に到着。捜索を開始します 」
『 こちら指令室。了解しました。それからグローバル総司令が、16時に中尉のみミーティング・ルームへ来るように、との事です 』
「 僕だけ? 了解。なら途中で副隊長に任せて、切り上げます 」
『 そのようにお願いします 』


 豪雨が止み地上の戦闘が落ち着いてくると、身を隠していた人々が次々と声を上げた。それ等に応えつつ、シェルターの位置データーと衛星で確認した生体反応を元に、救助隊を派遣する。

 その作業は、早瀬未沙を含むグループが取り仕切っていた。シェルターの収容人数や設備 ・ 状況から緊急性を判断し、救助の困難性を見て優先順位を決めてゆく ―― 人員不足の現状で、時に “ 切り捨て ” も有り得る任務だった。

「 早瀬大尉は何で、あんなに色々やらされるんだ? 」

 優秀だろうが元マクロス・メンバーだろうが、ちょっと多過ぎると思う。女なんだから倒れるぞ、あれじゃ。


ピピッ


『 たいちょー。コリャちぃ~っと、一筋縄じゃいきませんよ 』
「 どれ、どれ? ―― 泥、かぁ …… 」
『 他の成分も、順調に探知チュウ♪ って、はぁ ~~ っ ・・・ 金属反応、バリバリっす 』

 シェルターから「全てのゲートが塞がれて出られない」と報告は受けていたが、取り除かれた瓦礫の下を見て納得した。大きく破壊された入口に瓦礫が複雑に流れ込んで、間に泥が多量に詰まっているようだ。

 砂漠近くの高層ビル街に、よくある現象だった。形がない泥は取り除きにくく、瓦礫が邪魔でバキュームの使用も思うようにいかない。そんなファイバー・スコープも進まない穴の深部に、最新式のシェルターはあった。


「 こりゃニンジャの出番だ。おい、通訳機、よろしく 」
『 はい ―― 了解した、との事です 』
「 え~、バルキリー隊に告ぐ。5番機以下は上空、それ以外は俺と地上の警備。建設部隊は、撤去作業とキャンプ造設に掛れ。以上 」

 ニンジャとはゼントラーディのパワード・スーツ「ヌージャデル・ガー」部隊で、救助活動に多大な力を発揮した。武器を外して身軽にし、必要な道具を選択して装備できる改良がしてある。

 今日の彼等はバキュームとファイバースコープを体に巻き付けて、粉砕機とエア・カッターをハンドに装着し、地下足袋のような物を履いている。事前調査からこの状態を推測して同行していた彼等は、その名の通り忍のように身を翻して穴へと消えていった。

「 あいつら、何だかカッコイイぞ? 」
『 たいちょ~。俺達あまりモン、どうします? 』
「 じゃあ、残りの救助部隊は撤去作業に加われ 」


 リン・ミンメイとブリタイ艦の兵士を中心とした “ PR作戦 ” が功を奏し、かなりのゼントラーディ人が文化的生活を知って和平に応じた。しかし未だにそうではない者達もおり、救助には必ず警備のバルキリー隊が付く。隊の構成は、他に救助部隊と建設部隊 ・ 医療班がついた。

「 やれやれ。あと幾つ、やればいいんだか 」

 輝はもう何度も繰り返している光景を眺めながら、バトロイドの頭を掻いた。


豪雨の跡

by rchmj


マクロス内  中会議室


 マクロス艦内に設けられた臨時政府は、地球とゼントラーディの首脳陣により構成されている。彼等により今後の対策が協議されるが、しかし今ここには地球人しかいない。

地球人はゼントラーディ側には秘密裏に、このような会合を持っている。


「 現在の救助状況は? 」
「 予想される箇所の、70%程になります 」
「 救助された人数と、我々に付いたヤツ等の数はどうなってる 」
「 地球人80万人、ゼントラーディ人750万人です 」

 その圧倒的な数の差に、沈黙が流れる。地球人はマクロスの4万人( 出発時5万8千 )と、月面アポロ基地、地球の地下基地やシェルターにいた者達だった。この数字は、最終的に100万 対 1千万になる ―― 。


「 ここは我々の星なのに、地球人は少数民族になり下がったのか …… 」
「 侵略されたも同然だ! 」
「 数的にはそうだが、奴等は食料も物資もない。それで、あの大きな体。人類の方が優位だ ―― まだ 」

 ゼントラーディの食糧や武器等は自動生産システムにより供給されていたが、そのほとんどが戦艦の大破に伴い使用不能となっていた。彼等は生命力が強く高い戦闘能力を誇っていたが、知能は戦闘以外に関しては最低限しか有していない。地球人を例にとれば小学生並みで、生産はおろか修理の技術すらなかった。


「 PR作戦の方はどうだ? 」
「 かなりの成果を上げており、和平に応じない艦はあと10未満と推測されます 」

 PR作戦とは、ブリタイ艦隊の兵士達を通じてゼントラーディ人に文化的生活の素晴らしさを伝え、和平を勧めるものである。地球上に落下したゼントラーディ戦艦はおよそ2千隻(ブリタイ艦隊 約100を含む)で、航行可能なボドル艦隊残存軍は全て撤退していた。

 数値的には圧倒的不利にあるマクロス・ブリタイ同盟軍であったが、リン・ミンメイの歌を流しながらの地上戦とこの作戦により、各艦と和平を結ぶ事に成功した。


「 まあ、残りの奴等はただの盗賊に成り下がったからな 」
「 それも飢えて、いずれ投降するだろう 」

 未だ敵対するゼントラーディ人もいたが、物資の横取りや腹いせ的な襲撃などの被害に留まっていた。それは、既に軍や戦争とは言えない状態だ。ゆえに約1ヶ月間の地上戦の収束を以って、後に「第一次星間戦争」と呼ばれる大戦の終結が宣言された。

 また地球人とゼントラーディ人の共存を願って西暦改め「新紀元」とし、新たな歴史のカウントを始めたのである。


「 応じた者達の様子は? 」
「 積極的に救助活動や土木工事に参加する者も多く、予想以上です 」

 アポロを除いて地球側で唯一 基地機能を持つマクロスが中心となり、地球の再建が進められていた。世界各地に不時着した戦艦を中心に次々と街が建てられ、その全てが地球人と巨人が共に暮らせる仕様である。

 ゼントラーディ人は地球人の5倍のサイズであり、怪力だ。彼等は土木工事や建築作業において、極めて有能な労働者であった。


「 たかが歌の、何がそんなに …… 」
「 不思議な事に、ラブソングが好まれるようです 」
「 歌で恋を知る ―― だな 」

 ゼントラーディ人は男女が隔離されており、一切の生殖活動が存在しない ―― 巨人は “ 生産 ” されるのだ。彼等は地球人と外見的には酷似しているが、生体構造は内臓の配置や数まで異なり、格段に強かった。

 マイクローンはその生産装置(マイクローン・システム)によりゼントラーディ人を造り変え、地球人と同サイズでほぼ同じ生体構造を持たせた存在である。


装置の仕組みは
  1. 巨人を原子まで分解する
  2. その構造をコンピュータに記憶する
  3. そのデーターに様々な変換を施し、新たな立体構造パターンを算出する
  4. それに基づき、新たな体を再構成する
 地球側では「ゼントラーディ人はこの装置によってプロトカルチャー人を元に作られた、大型生物兵器である」と仮説を立てていた。そしてこの研究はエキセドルを中心とするプロジェクト・チームとは別に進められ、その内容は地球側の重要機密である。


「 共存の意識を高める為に参加させた、あの星間結婚2人の効果も大きいようです 」
優男やさオトコと美女で、絵になるからな。おまけに、2人ともエース・パイロットときてる 」
「 これで子供でも生まれれば、“ 家族 ” のイメージも付く 」

 人類とマイクローンなら、混血も可能であると推定されていた。地球人はMVP - 最小存続可能個体数 はクリアしているが、全地球規模の厄災により数値は最早アテにならなかった。
個体群が長期間存続するために必要な、最低限の個体数
 破壊と汚染が進んだ環境。地軸がずれて過去のデーターが役に立たず、気象や自然災害の予測が不可能。動植物の激減と、環境の変化による生態系の破壊 ―― 様々な危険に晒された人類は、今まさに絶滅の危機に瀕していた。


「 どんな生き物が出来るのか、想像もつかん。本当に大丈夫なのか …… 」
「 データー上は、な。異星人だの何だの、もう文句を言ってもおれん 」
「 あとは、愛で乗り越えてもらおうじゃないか。はっはっはっ 」
「 恋愛ドラマでも見せると、いいんじゃないか? 」
「 歌で懐柔して、色恋で骨ヌキか。闘争心を削ぐのは結構だが、浮かれてただの木偶デクにならんといいが 」

 地球上に存在するマイクローン装置は3千数百基で、地球側はその全てを「研究」の名の下に押さえていた。食料や日用品などを5倍サイズで生産する余裕はないし、何より巨人の力を恐れた。

 全ゼントラーディ人をマイクローン化するには、2年以上を要する。その間、自分達がこの星を征服可能である事に気が付かせてはならない。文化で気を反らし、懐柔し、彼等の能力を上手く使う ―― 地球人は文化的な種族だ。


 「共存」を掲げる旗の下。地球 ‐ ゼントラーディの戦いは、水面下で今なお続く。


本日のお茶受け


同  ミーティング・ルーム

 クローディアが出席者 ―― グローバル、エキセドル、マイストロフ、ミンメイとカイフン、マックス&ミリア、早瀬未沙 ―― に紅茶と菓子を配り、最後に自分の分を置いて着席した。

「 ほほう。今日は焼き菓子ですか。非常に結構な事ですな、マイストロフ大佐殿 」
「 エキセドル参謀殿も、甘い物がお好きでおられるか 」
「 当然です。ゼントラーディには、嗜好としての飲食物は無いのですよ 」
「 それは味気ないですなぁ。 にしても、紅茶に砂糖5杯は …… 」
「 いくら食べても、私はもう大きくなりますまい。それにしても、文化とは素晴らしい。おやつの時には、しみじみと感じますな 」

「 では第5回、ミーティングを開催する 」

 PR活動で各地を巡る、カイフンとミンメイ ・ マックス&ミリアの2組が活動の合間に集まり、現状の情報交換や各地での手応えの報告 ・ 今後の方針の擦り合わせ等を行っていた。

軍の高官は残っていたが、20歳を前後する若者が実質的には世の中を動かしていたのである。


コン コン

「 一条中尉、入ります 」
「 ああ、忙しい所をすまんね 」
「 いえ …… 」

 遅れて入室した一条輝は室内の面々を見回し、その目がミンメイに止まった。彼女は笑顔で応え、胸元で小さく手を振る。早瀬未沙はそれを見ていた。

「 一条中尉は、初めて出席するか。君も知っての通り現在PR作戦により、多くのゼントラーディと和平を結ぶ事が出来た。故に、それを阻止しようとする者もいる。そこで君に、今度の会場の警備隊長を頼みたい 」

 近々TV放送が再開する予定で、記念としてマクロス・シティでミンメイのコンサートを開催し、それを全世界に流す予定だった。大々的な発信に、何らかの妨害が行われる可能性は高い。


「 了解しました 」
「 詳細は、早瀬大尉から聞いてくれたまえ。君は確か、全員と顔見知りだったかな? 」
「 はい 」
「 そうか。あとは時間も会場も、自由に使ってくれ。クローディア君。ここは、19時までだったな? 」
「 はい、総司令 」
「 では、早瀬君。後を頼んだよ 」

 グローバルが出ていく後を、クローディアが付いて行く。新・統合軍の総司令付き補佐官となった親友の背中を見送って、未沙は誰からも気付かれぬように小さくため息を吐いた。頼りになる友人と有能な同僚を同時に引き抜かれて、公私共に心細かった。


「 よろしくね? 輝 」
「 ああ。こっちこそよろしく、ミンメイ 」
「 では引き続き、コンサートの概要を説明します 」

 マックス&ミリアもゲストとして登場する予定で、6人が部屋に残った。未沙は資料を配り、日時や会場設定などを説明する。ミンメイはカイフンに会場図を指さしながら、楽しそうに小声で話していた。

  ( 説明中に、おしゃべりだなんて …… )

 未沙は学校の先生よろしく、ペン先で神経質にテーブルをコツコツと鳴らす。資料を見る為に下を向いていた皆が気付いて未沙を見るが、ミンメイはまだ話していた。カイフンに注意されて顔を上げた彼女に、未沙は一瞥をくれて説明を進める ―― そんな事が、何度か繰り返された。


「 俺だけ、おやつヌキかよ。マックス、ちょい食わせて 」
「 マックス。一条中尉は、菓子が本当に好きだな 」
「 ミリアも好きだろ? ほら、口を開けてごらん ―― お食べ 」
「 お前らなぁ 」
「 なんだ、一条中尉。モチヤキか? 」
「 すみません。僕達、まだ新婚なもので 」
「 一体、いつまでそうなんだよ ―― にしても流石の大尉も、ミンメイには怒鳴れないよな 」
「 ミンメイさんには、そういう事が許されてしまう人柄がありますよね 」
「 作戦会議中にやったら、私は殴り倒すがな 」

遅刻するTV担当者を待つ間の休憩時、一条輝が隣に座るマックス達と小声で話していた ―― 丸聞こえ。


「 ねぇ、カイフン兄さん。こんな大きなコンサート、初めてね! 」
「 そうだな。絶対に成功させよう 」
「 ええ、もちろんよ。 だからお願いっ。ステージ衣装、新しいの作っていいでしょう? 」
「 当然だ。君の魅力を観衆に届けるチャンスだからな 」
「 嬉しい! だから好きよ、カイフン! 」

 ミンメイはそう言うと、横に居るカイフンに腕を絡ませて胸に頬を寄せた ―― その距離は、恋人同士のそれだ。そんな向いの席の光景に、マックス&ミリアは目を向けた。

「 マックス。あの2人、コーイビットなのか? 」
「 恋人だよ。もう一度言ってごらん 」
「 コイビート 」
「 コ ・ イ ・ ビ ・ ト。ほら 」


 そんなハートが飛び交いそうな2組の傍。一条輝は前のホワイト・ボードを凝視して、向いの席に目を向けない。早瀬未沙はそんな彼の視界から少しずれた席 ―― 前の司会席で、全てのやり取りを見聞きしていた。

  ( どうして ―― )


どうしてミンメイは、一条君の前で他の人とイチャイチャするのだろう
どうして彼女は、彼を傷付けていると分からないのだろう
どうして彼は、あんな子が好きなのだろう

―― それなのに。 私はどうして、あの子が嫌いになれないのかしら ……


「 いや~。お待たせしてすみません、早瀬さん 」
「 いいえ。 みなさん。こちらコンサートの総責任者をされる、MTVの ――
「 きゃあ~! チーフさんじゃない! 」
「 やあ、ミンメイちゃん。マクロスじゃあ、お世話になったネ 」
「 また一緒に、ステージ出来るのね! 嬉しいわ 」
「 今や宇宙的大スターにそう言われちゃ、ボクも頑張らなきゃナ 」

 ミンメイは顔見知りだったらしいプロデューサーの男に飛び付き、両手を握って満面の笑顔だ。彼女にそんな風に歓迎されれば、誰だって張り切るに決まっている。


  ( だって、ミンメイさんはアイドルだもの )

 未沙はそう自分に言い聞かせながらも、彼女にはそれだけでない事を知っていた。幼い頃から「上質を知る事が大切」という両親の考えで、音楽や絵画は勿論の事、料理や建築、文芸や演劇などの数々の芸術や学問に触れて来た。

だから分かる ―― ミンメイあの子はホンモノだ、と。


  ( 私は、ただの凡人。しかも軍人だわ …… )

 勉強もスポーツも、芸術も。能力があり努力を惜しまなかった未沙は、子供の頃から優秀だった。だから分かる ―― 私には才能がない、と。

 どの分野でも好成績を上げたが、一番には決してならなかった。地区で一番でも、国内。国内で一番なら、アジア。比較対象はどこまでも広がり、未沙はせいぜい都道府県レベルであった。

  ( 国を越えて一番になれたのは、宇宙軍の士官学校くらいね …… 。ふふっ ・・・ )


「 ミンメイさん。会議を始めるので、着席して下さい 」
「 あっ! すみません、また ―― えーっと、大尉さん? 」
「 早瀬で結構です 」

 多分この子は、私の名前も知らない。一条君だって私の事など、彼女に話してもいないだろう。私だけが意識している。私だけが一人、醜くなって。

―― なんて馬鹿馬鹿しい。 みっともない。 いやらしい。 こんなのは、いけない。


「 ごめんなさい …… 早瀬さん 」

 民間人の彼女は軍の規律に準じる義務はないし、未沙にもそんな権限はない。しょんぼりと座る姿は本当に反省しているようで、可憐な少女のそんな幼さを見れば、同性の自分でも許したくなる。それに稀有けうな才能を大切にしたい、という使命感が未沙にはあった。




 TV開局記念コンサートの第1回会議が終わり、それぞれが部屋を出た。当然のようにカップルが並んで歩く中、輝と未沙も自然と2人組になる。

出口へ向かうカイフンとミンメイは、輝達とは違うエレベーターに乗り込んだ。

「 輝、またね ~ 」
「 ああ。ミンメイ、ま ――
「 でねっ? カイフン。チーフったら ―― 」


 輝は上げかけた手を降ろし、閉まるドアを見詰めた。誰かの腕を取り明るく笑う姿は、以前と変りがない。けれど今や公私とも欠かせない存在となった従兄に、彼女は全身で甘えているのが分かった。

 それでいながら時にはハッとする程、大人の女性の顔もする。5歳以上も年上で、世界中を旅していたらしいカイフンは、きっと世慣れた頼りになる男だろう。

俺なんか ――

「 一条君 」
「 はい、大尉 」
「 あの …… この後、まだ仕事? 」
「 今日はもう、やりたくないな。なんだか大仕事 任されちゃたようで、疲れたよ 」


 そう言って肩をすくめる彼は、もういつもの一条輝だった。でも未沙には分かっている ―― だって。いつだって、彼を見ていたから。

「 じゃ、じゃあ。  お、お食事にでも行かない? 」
「 ええ !? 大尉と? 」
「 何よ、誘ってあげたのに! もう、結構です 」
「 そう言えば、商店街に新しく店が出来たって聞いたな 」
「 ああ、マクロスにはなかった所ね。 美味しかったわよぉ? 」
「 食い行ったんですか? 」
「 ええ。マックス君達と 」
「 おい何だよ、マックス! 俺も誘えよな。 んで、どこにあんの? 」
「 先輩は非番だったんですよ。場所は娘々にゃんにゃんと同じ、すずらん通りの ――


 ミンメイがマクロスに時々姿を見せるのは、噂で聞いていた。でも会いに行ったり電話なんて、1度もしない。彼女の傍には必ずカイフンがいて居場所が無かったし、恋人同士になったらしい2人を見るのはつらかった。

 マクロスでの約1年をミンメイへの恋心と共に過ごした輝には、忘れる事が難しかったのだ。今日のミンメイは、やっぱり明るくて可愛くて。でも今や地球のスターとなった彼女は、前よりずっと眩しくって ――

あ、ああっ! 私、他のお店がいいわ 」
「 なんで? 」
「 だって私、もう食べちゃったもの 」
「 その理由って、ズルくない? 」
「 それにもっと美味しい所、キムが教えてくれたのよ 」


ぴんぽーん! 
2カイデ ゴザイマス


「 早瀬さん、一条先輩。僕等ちょっとお呼ばれしてるので、先に失礼します 」
「 マックス、何言って ――
「 ミリア。いいから、こっちへおいで 」
「 私もキャビロフ小尉のお薦めをだな、ぜひ ――
「 言う事聞かない子は、お仕置きだよ 」


「 お仕置きとは、この前ベッ ―― がっしゃん


LOVE エレベーター標識 「天国に参りま~す」
( 注: こんな標識はありません )


「 なんだあ? アイツ等、いい加減にしろよな 」
「 と ・ に ・ か ・ く! あのお店は、イ ・ ヤ 」
「 ―― 大尉、俺に気ぃ遣ってる? 」
「 ! 娘々が、あの ・・・ 」
「 もしかして、分かる? 」
「 …… なぁに? 」
「 俺が、ミンメイを避けてるって 」


 いつもの早瀬未沙らしくなく小さくなって、申し訳なさそうに頷いた。ミンメイへの想いが再燃しそうだった輝は、彼女と会うのを避けていたのだ。

「 ミンメイはカイフンと、だよ。だから俺はもう、いいんだ 」
「 でも …… 」
「 ミンメイが言ったんだ。カイフンがいいって 」
「 …… 告白したの? 」
「 ちゃんと言わないと、後悔するんだろ? 大尉の言う通りさ。いつまでもグジグジしたくないもんな 」
「 私、そんなつもりじゃ 」
「 分かってたよ、ダメだって。お陰でスッキリした 」


 一条輝はそう言うと、大きく伸びをした。正直ミンメイへの態度を見れば、彼がスッキリしたようには見えないが。そしてそんな彼に気が付かない彼女に、未沙はスッキリしないが。

「 でも、その店は避けたいよな ―― やっぱ俺って …… ダメな奴? 」
「 ううん。それだけ誰かを好きになれたって、素敵なコトよ 」
「 そんなカッコいいモンじゃ、ないんだけど。何だか照れるよなぁ 」


ぐううぅぅ ・・・


「 …… 大尉のハラも、鳴るんだね 」
「 一条君じゃないの! 」
「 ははは! んじゃ、メシ行きますか 」
「 うん、もう! 今日は、あなたのオゴリですからね 」
「 ええーーっ! 何でそうなるかなぁ 」

 輝はプロメテウスへ、未沙は指令室へ。まだ仕事を残した2人は「じゃあ、1時間後にゲートで」と約束して、各々の持ち場へ帰って行った。


「 ねえ ―― 聞いた? アレ 」
「 うん。しっかりね 」
「 やっぱ、噂は本当だったわね 」
「 バルキリーで抱き合ってたんでしょ。中尉は一人乗りだから仕方ない、なんて言ってたケド 」


  『 手を取り合う一条中尉と早瀬大尉を、拡大モニターで衝撃目撃 』
  『 中尉の膝に大尉が、おスワリ帰還 』
  『 グランド・キャノンから、お2人様チェック・アウト 』

これは地球に降下したマクロスで一番初めに流れた噂話だが、いつもガゼが多いにも関わらず事実である。


  『 一条輝と早瀬未沙は、付き合ってる 』

これはまだ推定の域で、当人達は否定している。しかし周囲は、いずれそうなるだろうと予測している。

おわり
あとがき

戦後の設定
引き続きPメモの「空白の2年間」の「状況編」「三角関係編」を参考にしています。「新紀元」のみマクロスグラフィティーからで、迷いましたが2010年としました。SS中では分かりやすく、西暦で時系列してゆきます。終戦宣言、ニンジャや救助隊、未沙が戦闘指揮以外の仕事をさせられている、コンサート等は私の創作です。他はPメモの内容を膨らませて描いています。

大戦後2ヵ月が経って復興の兆しが見え、マクロスの面々も明るいカルさを取り戻しつつあります。最初に食事に誘ったのはCD「MACROSS CLASSIC」では輝っぽかったですが、私は未沙からとしました。

ニンジャ
カッコイイかなぁ、と思いまして。資料はPメモしか見ておらず、「紫色が忍者っぽい」とか印象だけで決めました。「防弾性と運動性を伴わせた結果、宇宙服としての機能を有するものとなって」との事で、ガスや高熱でも活動が可能で動き易い。「リガード部隊あたりからは羨望の対象となる事が多い」うんぬんとの事で、中の人はそれなりの立場で優秀。等との設定は、安易かしらん。今までマシンの資料はあまり見ませんでしたが、少し齧りました。「イメージぶっ壊し」とか「そんなの無理」等と思われた方、すみません。シェルターのゲートって、どの位の大きさなんでしょうねぇ? ただ出したかっただけなので、無責任な設定です。

輝の恋の炎
「一度はミンメイへの別れを告げた輝であったが、一年間の星間戦争で燃え上がった彼女への恋の火は、簡単に消えずにくすぶり続けていたのである」―― あんた、輝か? と言いたい。

ど・お・し・て、 そ・れ・を、 未・沙・に、 し・な・い・ん・だ

輝の鈍感さは恋の燃え尽き症候群、かもしれませんね。

未沙に「一条君」を連呼させられて、嬉しい。

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