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白い薔薇によせて



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「SS (二次創作小説)」
空白の二年間

想い出の White Christmas

 未沙は第二部であんなに悲しい思いをしても、どうして輝をあきらめなかったのでしょう。「好き」という言葉もなく、恋人らしい触れ合いもない。しかし輝の未沙に対する気持ちは、彼が自覚していない時期から、彼女には感じられていていたんだと思います。それらが輝を想い続ける、未沙の寄りどころとなったのではないでしょうか。

まだ恋に無自覚な輝と、十分に意識している未沙と ―― そんな時期の、甘い想い出をどうぞ。


雪をともす灯り

2011.6.18 UP
2011.12.25 改訂



 輝が新鋭可変戦闘機開発プロジェクトのテスト・パイロットとしてマクロス・シティの研究基地に配属されて、ひと月が過ぎた。そこでは発展改良型バルキリー VF‐X‐4 を使って、様々なテストが行われていた。未沙は危険なテスト飛行で輝が事故を起こさないかと気遣いながらも、彼といられる充実した日々を過ごしていた。

そんな2010年12月。すっかり寒くなってコートが手放せない時期の、ラブ・ストーリー。

「えっ、25日? 別に何も予定ないけど 」


街を彩るクリスマス・イルミネーション


              
 街の景色がクリスマス一色に染まる頃、輝と未沙は彼の宿舎で夕食を摂っていた。未沙が買い物リストを作っておいたのに、「どう選べばいいか分からない。未沙が選んでよ」と連れて行かれて購入した食器は、「未沙も一緒に食べるだろ?」と当然のように2人分だった。

作り置きの料理を輝は「旨かったー!」と喜んで言ってきてくれたし、前にはできなかった細かな掃除などもしたかった。そんな訳でいつの間にか未沙が週2回くらいのペースで輝の家に来ては、掃除や食事の差し入れをする事が定着していた。


「 もしよければ、私の家でクリスマス・パーティーしない? オーブンが折角あるから、久し振りに七面鳥やケーキを焼いてみたいの 」

 そんなメニューを、手作りでなど食べた事がない …… 。輝はいちにもなく話に乗った。今年のクリスマスは丁度休日に掛かり、2人とも非番であった。テスト・パイロットの輝も指令センターの未沙も、会議や他部署・上層部とのやり取りのため平日に勤務する必要があり、休日勤務は月1~2回くらいだ。そのため2人が休日を一緒に過ごす事は、以前よりもかなり多くなっていた。

「 ケーキ、どんなの? 俺、あのバタークリームって奴ダメなんだよね。円いの1個食いきれるかなぁ …… 。だって、鶏も丸焼きだろ? 」

―― 1日で全部食べる気デスカ …… !?


*  *  *


 未沙は前日から張り切って支度に取りかかった。大量の買い物をし、手際良く下ごしらえをしながらしまっていく。出来合いの総菜やレトルトなどを好まない彼女は、忙しい平日でもすぐ食事の支度ができるように休みの間にまとめて準備するのだ。

何種類もの野菜をゆでたり、肉や魚を小分けにして下味を付けておく。唐揚げや煮込み料理は多めに作って冷凍する。なので未沙には独身者用宿舎の備え付けの冷蔵庫は小さいため、自前で大きいものに変えていた。輝はその “ おこぼれ ” に与っている、という訳である。


「 輝ったら、食べ物の事ばかり言って。ちっともクリスマスっぽくないんだから 」

 ブツブツ文句を言いつつも彼が喜ぶ顔を思い浮かべれば、自然に弾んだ鼻歌も出るというもの。オーブンのスポンジケーキの様子を見て、下味を付けた肉に詰め物をし寝かせておく。

自然再生計画による緑化やクローン技術により動植物の飼育・栽培が進み、工場も活発に運転されるようになった。だから以前に比べて今は新鮮で美味しい食品や、洒落た品が幅広く手に入るようになっていた。

スポンジが焼ける甘い香り、つやつやと色鮮やかな野菜たち、しっかりとした手応えの大きな肉 ―― 未沙はそれだけで幸せな気持ちになる。


心躍る食材


 料理の準備は万全。お次は部屋の飾りつけ♪ とリビングのサイドボードの上に、30センチくらいのクリスマスツリーと、クリスタルのサンタを飾る。寝室に入るとベッドの上に置いておいたセーターを取り上げ、広げて表裏にして最終確認してみる。オフホワイトのしなやかなそれは、大戦以前の地球で作られた極上の細い毛糸で未沙が編んだ。

編み物は、母に習って以前はよくしていた。マフラー ・ セーター ・手袋 ・・・ 。想いを込めて、ひと目ひと目を丁寧に編むのは初めてではない。色々思いを巡らしながら手を動かしている内に、いつの間にかそれが形になるのが嬉しかった。想いを形にできる編み物が、大好きだった。そう、好きだったのだが ―― 長い間避けていた。

けれど「輝に誕生日プレゼントをあげたい」と思い、また編み始めたのだ。しかし思うように編めずに、結局彼の誕生日には間に合わなかった。それに輝はその時はまだアポロだったし、誕生日を知っていると言うのも恥ずかしい気がしていた。通信で彼の方から誕生日の事を言ってきたので、「おめでとう」と言うことはできたのだが。


 未沙は何となく視線を感じて、そちらに目を向ける。


視線の主


「 …… もちろん、分かっているわよ? アイツが用意してないかもしれない事くらい 」

ペンギンは黙って未沙を見ている。

「 いいのよ~っ! 私があげたいんだからっ 」

絶対にペンギンの目は冷やかしてる! 未沙はヤツをひと睨みしてから、無視を決め込んで用事を済ます事にした。セーターに街で買った革の手袋を付け、紺色の紙で包んで銀のリボンを掛ける。


*  *  *


 輝は翌日の夕方、未沙の家に着いた。佐官用は自分の宿舎より若干大きく、周囲に緑が多い気がする。見上げれば空は灰色で、今にも雪が降ってきそうだった。近くだからと薄着だった輝はクシャミが出て、思わず自分の両腕をさすった。


♪ ピンポーン


「 いらっしゃい 」
「 う~、さぶっ! 失敗したなぁ。もうちょと着てくれば良かった 」
「 本当に寒いわねぇ。入って? すぐに熱いお茶を淹れるわ 」
「 そりゃいいや! ―― お邪魔しま~す 」


 輝の家に未沙は何度が来たが、未沙の家に輝が入るのは初めてだった。玄関前から既に、香ばしい食欲をそそる匂いがしていた。未沙がキッチンに下がっている間、輝は興味津々で室内を見回す。

「 なんか、俺の家より広いね。作りもちょっと立派な気がするのは、ヒガミかなぁ 」

オフ・ホワイトや木目を基調としたリビングは、グリーンも置かれて爽やかにまとめられている。しかし毛足の長いラグや、ソファーに掛っているカバーは落ち着いた色合いで、暖かな雰囲気を部屋に添えていた。

サイドボードにはシックなクリスマスツリーと、白に淡いピンクが入ったポインセチアが飾られていた。それを眺めるようにして、メタリックなサンタが “ ちょこん ” と小さく座っている。


ポインセチアを見上げるサンタ



「 …… 」

 どこか覚えのあるポーズだと思いながら、ちょっと意外な未沙の趣味に見入った。今まで女の子の部屋などミンメイのを少し垣間見たくらいで、そう言えば知らない …… 。自分の部屋とは明らかに違う雰囲気に、今更ながらドキマキとした。

未沙と紅茶を飲みながら、気を取り直して話し出す。

「 …… 街の中もクリスマス一色だね。戦争が終わって1年経ってないってのにもうこんなだなって、スゴイよなぁ 」
「 マクロスの人達の力には、本当に驚かされるわ 」
「 特にお祭りっていうと、パワーが違うんだよ。 ははは … ホント、お祭り好きって言うか 」
「 ふふ。町会長さん、トナカイの着ぐるみ着て汗かきながら走り回ってたわよ。…… 孤児院でサンタと待ち合わせなんですって 」

 戦後だけあって、親がいない子供はたくさんいた。しかしマクロス・シティは、他のシティより里親が引き取るケースが多い。マクロスを故郷として、共に地球への旅路を歩んだ人々の結束は固かった。しかしそれでも限度があり、引き取り手がいない子もいたのだ。そんな子供達は、地域の人々の手によって守られていた。


*  *  *


「 昨日はVF-X‐4の実物を動かしながら、色々と説明を受けたんだ。最終的には、宇宙空間ならFASTパックのVF-1の30~40%増しの能力を想定しているんだって。あっ、ファイターでね! 性能判定は宇宙空間でVF-1と模擬戦闘テストをする予定らしいけど、ミサイル射程 ・ 命中精度 ・ 加速性 ・ 空間機動性なんかの成績を測定するらしい。それで、スゴイんだ! 俺、初めて見たよ ~ 。装甲を張ってないむき出しになったVF‐X‐4をガウォークに変形させてさぁ。まずエアブレーキが開いた後、脚が降りてくるのに中の部品が動くんだけど。それがこう ―― 動いて、ちゃんとつながって連動するようになるんだ。脚のつま先もエアブレーキになるように、さっきの部品の …… えーっと、どう言ったらいいかなぁ …… ? 」


VF-4ライトニングⅢ変形イメージ


 身振り手振りにも限度があり、もしここが輝の家ならばすぐにでも模型を使って説明をし始めそうだ。未沙も一応バトロイドについて素人よりは詳しいが、彼の話は専門用語も多い。また早く次を話たくて仕方ないらしく、早口で未沙にも分からない部分も多かった。それでも目を輝かせて楽しそうに話すのを見ていると、一緒に自分も楽しくなってくる。それでついニコニコ笑顔で、熱心に聞いてしまうのだ。

輝も未沙は普通の女の子と違い話は通じるし、返してくる反応も期待通りだ。しかも質問してくる事が、イチイチ鋭い。挙句に「この前のは結局どうなったの?」等と聞いてきたりするので、余計に彼女に話すのが楽しくて調子に乗ってしまうのだ。だからテストの結果が出ると、すぐ未沙に話したくなる。

―― 未沙にとって夢中になってテスト飛行の結果をまくしたてる輝は、ちょっぴり可愛くて素敵な人に思えた。


 2人は紅茶を飲み干すと一緒に準備を始めたが、輝はそれでもVF-X‐4がいかなるものかの説明を止められない。

「 ゼントラーディの技術はやっぱスゴイよ。技術長さんも大戦中の事を色々データー残してくれててさ。だからVF-X-4の性能は一気に上がったんだな。今度は粒子ビームを取り付けるんだけど ――
「 えっ? それって “ あの ” 荷電粒子ビーム砲よね? 」
「 うん。加速器の小型化の見通しが付いてね、ついに実用化に踏み切ったんだ 」
「 ま、待って。見通しって …… それ、危ないんじゃないの? 」

未沙の顔が強張ったのを見て輝は少し気を静め、ゆっくりした口調で話す。

「 うん? だからゼントラーディの技術をそこに入れて、前より格段に安定したんだよ 」
「 それなら大丈夫、かしらね …… 」
「 心配性だな ~ ? 未沙はぁ。また前みたいに暴発なんてこと、早々ないよ? 」
 
試作機のテスト飛行は命掛けなのは、輝も十分に分かっていた。しかし未沙を安心させるために、根拠のない事であっても軽い調子で言ってみせる。テスト・パイロットは平和時の軍隊において最もやり甲斐ある仕事と言え、輝はたちまち新しい任務が好きになった。自分の夢を、未沙に応援して欲しい ―― しかし、心配をさせたくはなかった。

「 あの時は本当に、息が止まるかと思ったわ 」
「 まあ、あの時はなぁ …… 。でも先輩もVF‐1のテストやってたけど、元気だったし。俺、色々聞いて羨ましかったんだ 」

 未沙の浮かない顔を見て輝は気分を変えてもらおうと、プロジェクトチームのメンバーの失敗談などを面白おかしく話す。外は更に寒さを増していったが、家の中は輝の弾んだ声と未沙の笑い声で明るく暖かだった。


*  *  *


 窓の外はすっかり暗くなり、雪が降り出していた。窓ガラスの曇りも「クリスマスの演出に」と、カーテンを開けたままにしておく。

.。*゚+.*.。 Christmas dinner MENU  ゚+..。*゚+ 
七面鳥の丸焼き
魚介のマリネ
きのこスープのパイ包み
トマトとアスパラガスのリゾット
ケーキ

クリスマス・ディナー

写真は雰囲気だけで、SSのテーブル・イメージとは異なります


「 すごい …… 俺こんなの初めてだよ 」
「 うふふ。輝はたくさん食べてくれるから、作り甲斐があって楽しかったわ 」
「 俺、ケーキの飾りとかやってみたかったなぁ 」
「 来年やらせてあげるわよ。今度は手伝ってもらうのも楽しいかもね 」
「 鶏を絞めるのは、未沙に任せるよ。得意だろ? 」
「 いつも言うこと聞かない人をシメ慣れてるから? って、やーね。さすがにそこまでは無理だわ 」
「 ハハハ! シメるって、俺のこと? 」
「 ちゃんと分かってるじゃない 」

 グラスにシャンパンを注ぎクリスマス・キャンドルに火を灯して電気を消すと、暖かな灯が2人を包み自分達だけの世界になったような気がする。

輝の瞳に未沙が、未沙の瞳に輝が映る …… 。クラシカルなクリスマスソングが厳かなような・別世界にいる様な、そんな気持ちに2人をさせた。


揺れるキャンドル



「 メリー・クリスマス、未沙 …… 」
「 メリー・クリスマス、輝…… 」

グラスを合わせると軽やかな音がして、2人は少し照れたように顔を見合わせた。クリスマス・ソングが、鈴の音の可愛いらしくて楽しい雰囲気の曲に変わる。

「 …… あ、頂きます 」
「 はい、どうぞ召し上がれ 」

未沙は七面鳥にナイフを入れて切り分け、輝の皿に綺麗に並べた。

「 へー、上手いなぁ。骨とかあるのに、よくちゃんと切れるね 」
「 ふふ。お父様が切っているのを見て、ね。私がやりたがると “ これは家長の仕事だ ” って言うんだけど、教えながらちゃんとやらせてくれたのよ 」


 父のマネをしながら言ってみる。忙しくてクリスマスを一緒に過ごせない年もあったが、いる時はいつも七面鳥を切り分けてくれた。父は普段料理をしなかったが、この時のナイフの扱いは何故か堂にいっており格好良かった。

モニター越しとはいえ目前で父を失った直後は、思い出すのもつらかった。しかし今は、懐かしく思い出す事もできるようになっていた。


「 う~~ん、旨い! ホント未沙って、初めは料理なんてオニギリくらいしか作れないと思ってたよ 」
「 失礼しちゃうわね! そんな人には、これからオニギリしか食べさせてあげません 」
「 うわぁ、うそ ・ うそ ・ ウソ、です! 」

そんな感じで冗談を言い合ったりしながら楽しくディナーは進み、最後にケーキを切る。

「 あまり甘くないようにしたんだけど、どうかしら? 」
「 ん。これならたくさん食べられるよ 」
「 無理しなくていいのよ? 残ったら明日にすればいいんだし 」
「 でも、未沙を太らせたら悪いからさ~ 」
「 もう! そんなこと言って、イヤな人! 」


 七面鳥とケーキの残りは輝が持ち帰れるように包み、テーブルの上を片付けた。ワインとグラス2客をセットし、アロマ・キャンドルに火を付ける。

「 あの …… クリスマスプレゼントを用意したの 」
「 えっ? ありがとう ―― 俺、何も用意してないんだけど、いいのかな? 」
「 ふふふ。そんな事だと思ってたわ。いいのよ、別に。お仕事を頑張ってるご褒美 」
「 そお? 僕もあとで何か贈るよ 」
「 別に大した物じゃないのよ? 」
「 でも、そうしないと僕が気になるから …… 」
「 じゃあ、期待して待ってるわ 」
「 うーん。期待されるのも困るんだけどさぁ 」

未沙が差し出した包みを、輝は少し改まった気分で頭を下げながら両手で受け取る。


Present Box


「 どうもありがとう。開けてもいい? 」
「 どうぞ 」

輝は丁寧に包みを開けると、中から出てきた物に目を輝かせた。

「 うわぁ、ありがとう! 早速着るよ 」


未沙の目の前で着て嬉しそうに手を上げ下げしたり、玄関口の姿見で全身を確認したりした。サイズがぴったりの上にしなやかなので、着心地が良い。薄手なので動きやすくコートの下に着てもモコモコしないだろうし、上着を着ない春秋にも活躍しそうだ。よく近くで見れば判かる細やかな編み込み模様は、白い色とも相まって上品でありながらどんな服にも合わせやすそうだった。

輝は一目で気に入ってしまった。

「 どう? お気に召して頂けました? 」
「 召します ・ 召します! すごいな~。これって手作り? ぴったりだよ。こんなの売ってやしない 」
「 輝用に編んだんですもの。Made by MISAよ? 」
「 帰りが寒そうで嫌だったんだけど、丁度いいや。手袋も格好よくて、着けやすい 」


 未沙が雪の様子を見ようと窓へ寄り、手で曇ったガラスをぬぐった。

「 ねえ、輝! すごい降ってるわ 」

輝も窓辺に行くと、すっかり雪で覆われた銀世界が広がっていた。見慣れたはずの街並みが、白と家々の灯火だけの世界になる。


窓辺の雪


「 ねえ? まるで雪の音が聴こえてきそうじゃない …… ? 」
「 雪の音? “ こん こん ” って? 」
「 うん、もう! せめて “ しん しん ” って言って 」

未沙は詩集も愛読していたから、美しい景色を見るとつい詩的なことを思ってしまう時もある ―― しかし輝は、残念ながらリリカルな感性の持ち合わせがないようだ。


 音楽がロマンティックなものに変わった。向かいの家のクリスマスイルミネーションが点灯し、赤 ・ 青 ・ 黄 ・ 緑  ・・・  色とりどりの小さな光が点滅して、輝にも光の音が聴こえた気がした。


瞬く光


未沙は窓辺に立ち、その背後から輝が外を見ていた。未沙は自分達の距離が近い事に、ふと気付く。こんな風に後ろから抱き込むようされるのは、初めての事だった。

先程のシャンパンのせいだろうか …… ? 頬に血が昇り、胸がざわめく。

  ( ああ …… ダメよ。輝に気付かれてしまう …… )

振り返ったら? いま動いたら ……? 自分の気持ちが輝に伝わってしまうような気がして、未沙は窓に付いていた手すらも動かせなかった。

 未沙の髪や首筋から、彼女の熱と匂いが立ち昇る。輝はいつもは感じない自分の鼓動が、分かる程に強く打っているのに気がついた。なんだか落ち着かなくなり、目キョロキョロと動かすと窓に付いた白いほっそりした手が目に入る。

指先がピンクを通り越して紅らみ、濡れている ―― 冷たそうなのが気になった。

「 未沙、手が冷えるよ …… ? 」

輝は自分の声が上ずっているのが分かり、慌てた。着けていた手袋を外して思わず未沙の手をとると、自分の手で包んだ。すると更に自分達の体が近付き、彼女の熱も上がった気がする …… 。

輝は自分の中の何かを抑えるかのように、声をひそめた。

「 冷たいね。暖めてあげるよ …… 」

 耳に掛かる吐息に、囁く声に、未沙は背中から力が抜けそうになった。こんな感覚は初めてで …… クラクラする。

―― もう、このままではいられない …… !

「 …… 帰る前に少し、体を温めた方がいいわ 」
「 …… ああ、そうだね 」

未沙は輝に包まれていた手を抜くと、自分の胸元で反対の手と握り合わせて肩をすくめた。そのまま後ろへ少しだけ振り返り、肩で彼の胸を軽く押す。輝は体を後ろに引いて、彼女を腕の囲いから解放した。

未沙は逃げるようにしてテーブルへ戻る。

  ( やだわ、どうして …… )


 ワインを注ごうとしてもボトルを持つ手が震える。輝が無言でそっとボトルを取り上げて、2人分のワインを注いだ。イスに腰を掛けてグラスを掲げると、2人の目が合う。

―― 炎できらめく瞳から、目が離せない …… 。


始まりを奏でるグラス


2人は何も口に出せないままグラスを合わせ、始まりの鐘の音だけが部屋に響く…… 。


キャー!  キャハハ!


 向かいの家から子供達が出てきて、イルミネーションと雪に歓声を上げた。輝は瞳を緩めると、ぎこちなくではあったが笑みを作った。

「 今日はありがとう。今までにないクリスマスになったよ 」

未沙もホッと肩の力を抜き、笑みを浮かべて小さく首を振る。

「 ううん、私も楽しかった。こんなクリスマスは久し振りだったわ 」
「 来年は、俺もちゃんとプレゼントを用意する 」
「 楽しみね。何くれるのかなぁ~? 」
「 未沙がビックリするようなのにでもしますか! 」
「 手編みのマフラーなら、びっくりするかもね? 」
「 今から編んでも、永遠にマフラーにならないなぁ…… 」
「 ふふん? まずは、今年の分をもらわなくっちゃ 」

 いつもの2人に戻って笑い合い、グラスに唇を寄せた。一口含むと「おいしいね」と、目を見合わせてニッコリする。


聖夜の Heart



グラスの縁が濡れて、キャンドルの灯で輝いているのが美しかった。

おわり


あとがき
一条君、早く自覚してね、と言う事で。空白の2年間に少しぐらい甘い記憶がなければ、未沙も第2部で輝を信じ続けられなかったのでは? そうでなければ愛想を尽かすか諦めてしまうかだと考えました。そこで「未沙のテーマソング その2」と私的には思うこの甘い曲からイメージしてSSを作りたいと着手。時期的に詩の全てを網羅すると、第2部の輝が不誠実な奴になってしまいます。なので一部のみの使用でしか書けず、他は2012年以降のSSで展開できたらと断念しました。続きを書いてこちらを前編とできるか? 上手くあの恐るべき「ロマネスク」とも絡められるか? と、正直困難さを感じております …… 。

輝のオタ話
ついていけませんよ。メカオタ話を考えるのがキツくて、プロジェクトメンバーのネタまでは面倒みきれません。そんな輝が可愛くて素敵に見える未沙については「パーメモ」より。
VF‐X‐4については → 参考資料 フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」

耳もとで囁かれた熱い言葉
思い付かず「書いてれば創作の神様は降りて来るだろうか」とお待ち申し上げていたが、輝はつまらん話ばかり。この段階の2人では、やはり無理なのか? チャレンジャー過ぎたのか …… ? 輝! 下らん話はいいから、早く熱くなれYO !! ―― 危なく耳元で熱く「こん こん」と囁いて終わるトコだった …… 。

輝と未沙の身長
10センチと違わないはずで、「後ろから手を包むなんて相当密着しなきゃできないじゃんか!」 とウハウハする …… なのに何故なにもない! 子供らああぁぁ~!

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 Comment 

敦賀屋バボ様 初めまして 

ようこそいらっしゃいました。
お名前は、他のマクロスブログ様でお伺いしておりました。
“アツガヤ”バボさんとお呼びすればよろしいのでしょうか?

「作り主の愛情の賜物ですね」
と、言って頂けると嬉しいです。
結構何度も見直しますので…。
なのに何故か何度も間違いが見つかるのですがv-12

うっほ⁉ 

真夏日に 見ちゃったけど 真冬の聖夜が
いとも簡単 お茶の子さいさいに イメージ出来ました‼
作り主の愛情の賜物ですね 読んでてo(^▽^)oでした ただ 無念なんのは、当時のTVで この
お話が 見たかったよ~~~(T_T)
良き お話を 読まして貰えて 嬉しゅうごぢゃりましゅo(^▽^)o

Re: タイトルなし 

何度も文章を見直すので、そう言って頂けると嬉しいです。
音楽や、匂い、景色なんかに、キャラの気持ちを投影する表現が好きなんです。

酒飲んでから、食い物持って帰ります。
輝がちっともロマンチックじゃなくて、苦労します。

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