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白い薔薇によせて



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「SS (二次創作小説)」
空白の二年間

After The War ―― 1ヶ月

TV版第27話直後から約1月後までです。その頃の地球の状況と、輝 ・ 未沙の心境を描きます。

ご注意
 ~ ・・・ 部分に大した事はありませんが残酷 ・ オカルト的な表現があり、苦手な方は飛ばしてもストーリーに支障はありません。

 地球全土は焦土と化し、気化した土壌や動植物の成分が大気となって充満していた。おびただしい戦の破片が無数の流星となって、重い雲が覆い始めた漆黒の空に煌めく。その流星雨に混じって巨大な光点が地表へ堕ちていった。戦闘で損傷して宇宙航行能力を失った戦艦が、次々に落下してきたのである。


 その中に大破したマクロスの姿もあった。マクロスは地上に開いた巨大なクレーターの中へと身を落とし、まだ破壊の熱が冷めやらぬ大地に半身を現わして鎮座した。


流星群

2012.4.30 UP


 マクロス・ブリッジは、一条輝と早瀬未沙を静かに迎え入れた。内部は余り変わり無く見えるが、マクロス・アタックで重要部分に致命的な損傷を負った。通信が断絶した部署もあり、ブリッジの面々は手分けをして状況確認に走っている。

 キャプテンズ・シートに座るグローバルの前に2人は並び、背筋を正して敬礼した。

「 早瀬大尉、一条中尉。ただ今帰還致しました 」
「 うむ。2人とも、よくぞ戻って来てくれた 」

 グローバルは立ち上がり、敬礼を返す。帰還報告を受けてはいたが、怪我ひとつない姿を見れば感慨深かった。口にこそ出さないが、早瀬未沙は今でも自分の娘のような存在だ。

 未沙はグローバルに統合軍本部の状況を説明しながら、実感が湧かなかった。スクリーンの向こうの赤黒い大地は、まるで映画のセットのように見える。

「 そうか。早瀬提督も …… 」
「 はい 」

父の最期を正しく語る事は、出来なかった。


「 ひかる …… っ ! 」

 グローバルが現在までの状況を説明していると、ブリッジの扉が開いてミンメイが一条輝の胸に飛び込んで来た。

「 ミンメイ …… 」
「 無事で良かった。あたし ・・・ うっ、う ・・・ 」

 そんな彼女を優しく抱きとめ、慰めるように背中を撫でる。その光景は、未沙の胸を ス― … ッ と静かに切りつけた。

  ( 私、だったのに …… )

「 早瀬大尉! よく御無事で! 」
「 たいい~~、良かったですぅ 」
「 大尉! 」

 未沙の元に3人娘が駆け寄り、涙を流して取り囲んだ。一人ひとりと手を握り合い、互いの無事を確認する。

「 お帰り。未沙 」
「 クローディア …… 」

 両肩に手を置く親友に、未沙は「戻って来た」と今更ながらに実感して、目頭が熱くなった。仲間達とは、二度と会えないかも知れないと思っていたから。


「 さ、ミンメイ。もう泣きやんで? 」

 嗚咽が落ち着いてきた彼女の涙を輝は親指で拭い、震える肩を取ってそっと遠ざけた。そして脇に立つカイフンに目を向ける。掌を差し出すカイフン、その手を取るミンメイ。


  ( 君を抱き締めるのは、俺じゃないよ ―― もう俺は、君を慰められないんだ )


 未沙は愛しい人の背を恋敵に押し出す彼の目に、堪えた切なさを見た。

  ( 一条君 …… )

―― もしかして、彼は失恋したのかも知れない。抱き寄せられるミンメイから反らして足元の床に目線を落とす姿に、確信した。始めに未沙が感じたのは、怒り。

  ( あんなに一条君に好かれてるのに、どうして …… ! )

次は悲しみ。好きな人に好いてもらえなかったと知った時の心は、よく知っている。

  ( 一条君、お願いよ。あんまり悲しまないで。いつかきっと癒えるから、ね …… ? )

最後は喜び、だった。

  ( これで、ミンメイさんを諦められるはず )

 そこで未沙は愕然とした。こんな状況にも関わらず違う事を考えているのも、人の悲みを喜ぶ自身にも。
そして何より ――

  ( 私、一条君のこと …… )

 有り得なかった。年齢も階級も下の男など、考えた事もない。魅かれるのは知的で落ち着いた、しかし信念を追求する意思と情熱を持つ男性だと思っていた。一条輝が、それのどこに当てはまろうか?


「 早瀬大尉。この後の事だけど ――

  ( 早瀬? ―― って、輝。あの女性ひとが早瀬大尉なの? )

 ミンメイはカイフンの胸から顔を上げて、輝が歩み寄る白い軍服の女性を凝視した。明るい色の豊かな髪と透明感のある白い肌、スラリとしたスタイルがまず目に入る。明らかに大人の、年上の女性。

  ( ふ~ん …… ちょっと意外、かな )

 自分とは似ても似つかぬ容姿と雰囲気。仮にクラス・メイトになっても互いに遠巻きにして見るだけで、絶対に友達にはならないだろう ―― 正直言って、苦手なタイプ。あの髪型、アノ人にはちょっと合わないみたい。お化粧だって、もっと華やかな色にすればいいのに。

  ( ヘエ …… 輝、ああいう人がいいんだ。良かったじゃない、美人で ―― でも )

ミンメイは綺麗にカールした髪を指に巻き付けて、クスリと笑った。


 未沙は一条輝に相談されて、ミンメイを帰すかどこか落ち着くところへ案内する事にした。まずは2人の意向を聞いてから、グローバルに進言しようと考える。カイフンに守られるように肩を抱かれて立つ、彼女の所へ向かった。一条輝が自分の後を付いて来ている。

「 ミンメイさん、カイフンさん。お疲れの所をすみません 」

 トレードマークの巻き髪に絡めた指には、艶やかなマニュキュア ―― 手を握って味気ない指先をしまった。色鮮やかなステージ衣装は、殺風景なブリッジに咲く可憐な一輪の花のよう ―― 脱出時の汚れが目立つ薄汚れた軍服は、もう隠しようもない …… 。

  ( 見ないで、一条君! 私とあの子を …… )

 未沙は唇を引き結び、ヒールの感触を意識して背筋を伸ばした。自分を他人と比べて、諦めたり卑下するのは愚かな事だ。比べる相手は自分のみ、自身の倫理や信念を裏切らないのが潔白である事。そうした父の教えに恥じる生き方は、今までして来なかったつもりだった。

でも ――


白に落ちた1滴のは拡散して混じり合い、しばらく後に再び白を取り戻した
でも白は知っている ―― もう自分が純白では無い事を



雫が描く波紋


「 諸君。無事を確かめ合ってる所を悪いが、直ちに戦闘配置についてくれたまえ 」

 グローバル艦長の一言に、輝と早瀬大尉の顔に緊張が走る。ミンメイには彼と彼女が、男女の違いはあるものの、全く同じに見えた ―― その目、が。

  ( 輝だって結局は “ 同じ世界の人 ”  がいい、ってコトね )

 そこにいた全員が、和やかだった空気を一転させた。ミンメイは「私とカイフン以外、ここの人は皆んな軍人なんだ」と実感し、急に居心地が悪くなる。そんな彼女の前に幼げな、女性というより女の子に近い人が立った。

「 お2人は、私がご案内いたします 」

  ( こんな人でさえ、戦うんだ …… )

 ミンメイは偵察機に乗り、今度は上空から歌う事になった。女の子の後ろを、カイフンに手を取られて崩れた廊下を歩き、暗い格納庫へと入って行く。艦内は乗員達が慌ただしく駆けずり回り、機械音が響く中で怒声が交差する。ここは自分とは違う、と思った。

「 ミンメイ。大丈夫か? もし乗るのが怖かったら、さっきのステージに変えてもらうよ 」
「 カイフン兄さんがいれば私、ゼンゼン平気よ 」

( 私が輝をフッたのに、どうしてこんなに気にしなきゃならないの …… ? まるでアノ人に取られるのが、嫌みたいじゃない )


 こうしてボドル旗艦艦隊を撃退して、一時的な休戦状態が訪れた半日後。戦争は再開された。今度は地上戦である。再会の喜びもつかの間に、血を血で洗う1ヶ月が始まった。


暗闇に閃く雷光





 黒い雨が叩く地に、闇にまみれた蠢き。落雷の閃きに垣間見えたその正体は、2つの人影の死闘だった。


ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!

ドブッ ゴブリ ・・・


 激しく乱れる息遣いと、絡み付く泥海の音。腰を抱え込まれて、敵の脳天を何度も殴打した。噴き出す血飛沫にも緩まぬ腕を掴んで引き剥がすと、ズブリと相手の体が泥濘に沈む。黄色く濁った白目を汚泥が呑み込み、苦悶と妄執をかたどった両腕だけが地上に残った。


ヒィ ・・・ ッ!


 ふと見た自分の手指は血でヌラヌラと光り、腰から膝にかけて10本の血筋が掻かれていた。洗面台を真っ赤にして必死に洗うも、刻まれたシミは落ちない。排水口に流れ込こむ色は鮮やかで、「オマエがコロシタ」と無言で糾弾した。

 ゴボゴボと鳴るその暗い穴の底で、自分を凝視する黄色い白目がグルリと回る。恐怖に顔を上げれば、鏡にはさっき沈めた男の顔。髑髏どくろの如く空洞となった眼窩を抜ける風が、オオオ・・・ と鳴って生気を吸い込む。

恐慌して立ち尽せば、ドロリと頭に生ぬるい感触。顔を流れ落ちる泥は、赤黒く ――


「 うあああぁぁ・・・っ !! 」




 輝はベッドから跳ね起きた。現実と悪夢が見せた恐怖に肩が激しく上下し、動悸で胸が痛む。目には見慣れたポスターと、床に脱ぎ捨てたパイロット・スーツ。大きく息を吐いて、湿ったTシャツを脱いだ。ベタ付く首や胸をそれでこすり、ゴミ箱へと放り込む。

不快な額を拭えば、震える指は冷や汗で濡れていた ―― その無色に、ひたすら安堵する。

  ( あぁ …… 一体いつまで続くんだ )

 撤退出来なかったゼントラーディ軍は、とにかく目前の敵を倒す事に執着した。彼等が指示のない状態で繰り広げる戦闘は無秩序で、補給も受けられないが為に最後には突撃してくる。砲撃をかいくぐって到達した肉弾と格闘し、相手が戦闘不能になるまでひたすら拳や膝を振るった。失う事を知らない命知らずの捨て身に、容赦ないフルパワーを必死に叩き付けた。


ジャッ


 輝はカーテンを開けて、依然つづく暗闇と雨に憂鬱になる。今日も真っ暗な中、手探りで戦わねばならない。ボドルザー艦隊500万隻の火砲が繰り出した70億条を超えるエネルギーは大気をプラズマ化し、瞬時に蒸発した地表の成分は厚い雲となって全世界の光を遮った。

黒い雨となって還ってきたそれらは、視界を覆いレーダーを無効化する。戦闘は一気に旧時代へと戻った。


 こらした目に映るは、地から突き出た2本の奇怪なオブジェ。

窓の外の光景



あれは ―― ただの鉄骨だ


 時計を見ればもう朝のはずの時間で、シャワーを浴びると食堂に行った。かつては談笑で賑やかだった場所も、今は人がまばらだ。以前は知り合いに声を掛けて相席せねば、食卓を確保出来なかった程なのに。

 皆が1人で黙々と食べる中で、輝は知っている女性を見掛けた。

「 早瀬大尉 」
「 お早う、一条中尉 」
「 お早うございます。向かい、いいですか? 」
「 どうぞ 」

 早瀬未沙の食器は空で、彼女は最後のお茶を飲んでいた。日々の激務と余りの現実に、食事を摂れなかったり吐き戻す者も多い。増してや女性では、部屋から出られなくなる者もいた。

「 よく食えますね 」
「 食べなきゃ動けないでしょ。そういうあなただって、ちゃんと1人分じゃない 」
「 口に突っ込めば、それなりに。今食わないと、次いつ飯か分かんないし 」
「 ふふっ、私もよ 」

 戦場に一旦出れば、いつ戻れるか分からない。敵弾の切れ間に携帯食を水で流し込み、帰還出来るのは戦いを終息させた後。人員不足で睡眠もまともに取れない状態だが、モニターの向こうには大抵 早瀬未沙がいた。

 もう勤務ローテーションなど、どの部署にも存在しない。彼女も恐らく指示の合間に飲食し、席を外すのは戦闘が無い時だろう。早瀬大尉は複数の戦場を1人で采配していた。女性である身を案じて「大丈夫?」と聞いても、「指揮は任せて」とサラリと返されたが。

「 ですよね 」
「 自分は機械マシーン、コレは燃料。ねっ、吐き気もないでしょ? じゃ、お先に 」

 そう言って早瀬未沙はカップを掲げ、トレー片手に席を離れた。輝はしばし唖然と白い背中を見送り、突然がむしゃらにパンを喰い千切り、スープで飲み下す。


「 あっ、ぢーーーッ! 」


朝食メニュー

あと、スープとか缶のフルーツがつくか?


 早瀬未沙は1人、指令室を動けないでいた。マクロス・アタックによりブリッジは使用不能となり、同じくマクロス内に新たに場所は設けた。しかし戦闘の多さに対して余りに人材不足で、彼女は時にこうして1人で切り盛りせざるを得なかった。

 配線が剥き出しのモニター6枚に囲まれ、未沙はそれら全てが目に入る少し離れた位置で端末3台を操っていた。上下に位置するモニター2枚が1台の端末と繋がり、それで1組になっている。それらの左上には数字を書いたガムテープが貼られ、数字は部隊の番号だ。「3/6」とは第3 ・ 第6部隊と通じている機器、という事である。端末が3つしか無いので、2部隊1組で接続を切り替えて操作しているのだ。

ここで早瀬主席航空戦闘指揮官は、戦闘を流れ作業のように “ こなし ” ていた。


「 第3部隊。バルキリー隊は艦尾へ突入し、陽動せよ。デストロイド隊は艦首が手薄になり次第、艦底亀裂部より侵入。その段階で早瀬まで連絡を。艦内の様子を確認後、追って指示する ―― 以上 」

『 こちら第5部隊 ――
「 こちら指令室、早瀬大尉。至急ですか? ―― 5分後、こちらから連絡します。以上 」

「 第6部隊。その型は輸送艦です。目標を占拠し、武器は破壊、食料資材は確保。途中で敵援軍を確認した場合、ただちに撤退して全破壊。指令官は降伏勧告に応じませんでしたが、個々の兵士には可能な限り投降の意思確認をせよ ―― ナニ言ってんだ、アンタ! んな悠長なコト ―― 了解の応答がありませんが、分かりましたね? ―― オイ! ―― 宜しい。以上! 」

 彼女の目はモニターの間を絶え間なく行きかい、常にオープンな部隊長との回線は時に同時に指示を求める。早瀬未沙は画面から目を離さずに、通信を切り替えて各々に応答しながら端末を操作した。


 そんな絶え間ない戦闘の合間にも、一瞬の空白はある。

「 ふう ・・・ っ。 さて、次はどうする? 早瀬大尉 」
「 一条ですが、今いいですか? 」
「 ええ、結構よ 」
「 アポロ8大隊の部隊割り見直し案ですが、こんな感じで 」
「 すぐ確認するから、あなたは待ってて 」

 一条輝から手渡された紙を受け取り、未沙は髪を掻き上げながら目を通した。これは彼女が苛立った時や、気分を切り替える時にするクセだ。頭に刻み込むようにブツブツと小声で読み上げる横で、一条輝はモニターに照らされる繊細な横顔を見ていた。

 早瀬未沙はパイロット達の間で美人だと言われていたし、自分も綺麗な人だと思う。そして今モニターの光で彩られた戦う彼女は、近寄り難いが美しいと思った。


シューッ


 ドアが開く音と共に、コーヒーの香りが漂う。

「 失礼します。 あ、一条中尉もいらっしゃいましたか。すみません、早瀬大尉の分しか 」
「 あ、いや僕は ――
「 ありがとう。彼の分は、結構よ。指示書は午前中に、表書きの部署へ届けて下さい 」

 指令センター員はカップを端末の横に置き、書類の束を持って出た。未沙はチラリとそれに目を向けると、小さくため息をく。

「 機器の傍には置かない、って言ってるのに ―― あっ! 」


 突然起きた地震に液面が揺れ、イスに座っていた未沙の前を一条輝の体が素早く横切る。

「 ―― セーフ。地震、多いな 」

彼はそう言って、カップを端末から離して置いた。未沙は目を見張って、しばし動けない。

「 …… 一条中尉、どうぞ 」
「 え? 」
「 コーヒー、いかが? 」
「 いや、これ大尉のだし 」
「 いいのよ。私は内勤だから、いつもで飲めるわ。あなた、ブラックでよかったわよね? 」
「 はぁ。 んじゃ、遠慮なく 」
「 飲みながら聞いて頂戴。これで概ね結構です。ただ、ココとココは入れ変えて 」

 未沙は指でその箇所を示しながら全モニターをざっと見て、回線を1つオープンにした。

「 第5部隊。5分経ちました。用件を ―― では、当初の計画で。ただし ・・・ 」

ペンでリストを直しながら報告を聞き、指示を出す。回線を切ると、メモを輝に返した。

「 今の戦闘で、第6部隊は不適格と判断しました。悪いけど、あなたかジーナス少尉に付けて欲しいの 」
「 何故ですか? 」
「 Variable Fighter ‐ 可変戦闘機 ‐ とはどういう物か、実際に見て分かってもらうわ。やっぱり指示は、納得して従ってもらわないとね 」

 大尉で女性でもある早瀬未沙の指示に素直に従えない者は、特にアポロからの部隊に多かった。それでも彼等は士官である彼女には、輝に対するよりマシな態度だったが。


コーヒー


 一条輝が帰った後、未沙は目を閉じて背もたれに深く寄り掛かった。マクロスに戻ってから、ずっと眠れなかった。暗闇に見えるのは、炎に掻き消える笑み。静寂に聞こえるのは、最後の言葉。
せめてあの時、どうして父と呼べなかったのだろう ―― 1人で自室にいたら焦燥感と動悸にさいなまれ、気が狂ってしまいそうだった。

 意識が途切れるギリギリまで指令室に居て、電灯とラジオをつけ放した自室で事切れるようにベッドに入る。父を呼んで目覚めれば、時計の針は2~3時間しか進んでいなかった。

  ( 提督。あなたが残された数々の物は、私には荷が重過ぎるようです )


 そんな張り詰めた未沙に訪れた、ささやかな休息。さっき一瞬鼻先をかすめた外気とオイルと、彼の汗。いつもなら異性のそんなものは、身震いするほどに気持ちが悪い。

けど ――

  ( イヤじゃ、なかった …… )

 グランド・キャノンに迎えに来てくれた時、しっかりと抱きとめられた感触と共に覚えた臭い。こんな緊迫した日々でも、一条輝の存在に胸を高鳴らせる自分がいた。「不謹慎」「馬鹿みたい」と思いつつ、それは確かに今の己を支えている。


「 第3部隊、そろそろね 」

 短時間で背を伸ばし、冷めた目でモニターを見る。何かを振り切るように髪を払うと、通信ボタンに手を伸ばした。そこへ別の回線から連絡が入る。

「 ―― 了解。私が対応します 」

 戦闘は、まだ続く。その後にも、きっと新たな試練が押し寄せて来るだろう。だから今は深く考えないでいい ―― 未沙はそう自らに言い聞かせながら、「5」のガムテープに「/ 7」と書き加えた。

終わり

あとがき

大戦や地球の状況は、Pメモより
ただPメモで描かれている輝未沙の心境は恋愛中心で、「あんな目にあったのに、どうしちゃったの?」な感じです。「三角関係編」だから当たり前かもしれませんが。すぐにデートで映画に行く等していたかのように見え、幾らノーテンキでも有り得ない。なので悪夢や早瀬提督のくだりは私設定です。

同時に5~6の戦場を指揮できるか?
分かりません。多分ムリ。肉弾戦ではあったようですが、レーダーが利かないのは私設定です。理由は調べた意味不明な内容で、何となく触りました。時代に逆行して肉眼頼りの超近距離戦としましたから、現地の部隊長に基本は一任です。未沙はゼントラーディ軍との戦闘経験を生かした、指揮と言うよりオブザーバー的な役割。

デイトレーダー(株の売買で利益を得る人)が周りにモニターやキーボードを何台も並べているのを見て、「カッケー …」と思ったから描いただけ。職場でデキル女性課長がモニターを並べて淡々とタイピングしながら、離れた所での男性部下同士の会話へ「あ、それはねぇ ―― 」とモニターから目を離さず作業したままスッと指摘を入れてたのが、えっらいオットコマエで憧れただけ。優秀で厳しくてクールな未沙が見たいです。

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