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「SS (二次創作小説)」
超時空要塞マクロス 第二部

幕間 ひとり言

「第32話 Broken Heart」の直後。救出後の輝 ・ 未沙 ・ ミンメイ&カイフンの、想いと状況です。

雪原の立ち木
雪原の樹
2012.2.27 UP


控室 ~ side 輝 ~

「 ったく、何だよ 」

 輝はパイロット控室のイスにどかりと腰を降ろすと、手荒くヘルメットをテーブルに置いた。ガツンと音をたてたそれが、球面に従ってひとりで左右に揺れる。

「 おっと、いけね 」

そう強くぶつけた訳ではなかったが、慌ててそれをクッション部が下になるように置き直した。

( 俺がいつも言ってるんじゃないか。「ヘルメットは頭部を保護する物なんだから、大事にしろ」って )

輝はレース用から戦闘機になった今も、飛行機を愛している。父やフォッカーの教えを、気が付けば自分も部下に伝えていた。それは言葉を介してだけではなく、教えるを意図せずに彼が当たり前としている行為からも分かる事だった。バルキリーに整備員が施してくれるのは、基本的な最低限の事のみだ。だから輝は自分でマメに手入れをしたり機体を磨いて、付属品や工具に至るまで大切に扱っていた。

隊員達は入隊理由は様々であっても、皆ここまで残った者達だ。飛行機に魅せられた多くが、輝の技術や姿勢に尊敬を寄せていた。

そして何よりも一条輝は、マクロス野郎ども憧れの “アイツ” を独り占めしているのだ。とんでもないジャジャ馬で、大抵の男は振り回される。仮にその独特のクセを掴んで思うがままに従わせられたかと思えば、せせら笑って裏切るのだ。飛行機馬鹿を夢中にさせる魅力的な “アイツ” ――

ハセガワ 「VF-1S ストライク/スーパーバルキリー たまごひこーき」

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“ロイ・フォッカー・スペシャル” とはその名の通り、フォッカー用にカスタマイズされた特別仕様のバルキリーである。これをそのままに受け継げるのは、同じ技術と心得を叩きこまれた輝しかいなかった。


 そんなスゴイ奴がいま考えているのは、お世辞にも大した事ではない。

( 未沙のヤツ …… )

頭ごなしに命令する彼女に腹が立った。昔は確かにその言い方によくカチンときていたが、最近はなかったのに。自分の捉え方が変わったせいもあるし、未沙も以前とは違っていたからだ。なのに今日は ――

( 上官風吹かせて )

急な未沙の態度の変化に、納得がいかない。今まで言い合いになっても彼女は自分に対等に接し、だから話し合って決めてこれたのだ。しかしあの時は俺の意見など聞こうともしないで ――

( ヤキモチなら、そう言えばいいんだ )

理由はそうとしか考えられず、なら多少の強引さも許せる ―― いや、あんな命令調で言われても腹立たしいだけだ。女ならこういう時は、少しスネて見せれば可愛いモンだろうに。ミンメイだったら ――

( 別にもうナンでもないんだから、今更ヤキモチもないだろ )

ミンメイはカイフンと結婚秒読みと言われているし、俺は未沙と、だ。ミンメイがまだ好きだって言うんなら心配するのも分かるけど、会いたいのは懐かしいからだ。だから俺だって会うんだし、友達なら普通だろ?


 輝はヘルメットの塗装にわずかに残るキズを、親指の腹でグッと擦った。かなりの強度を持つ装具だから、これは単なる汚れだろう。ちゃんと拭けば、きっと綺麗に落ちる。でも ――

『 あなた、中隊長じゃなかったの? 』

未沙の目が隊長らしくないと責めているような、悲しんでいるような、そんな風に見えた。彼女は知っているのだ。輝が中隊長たるために、どんな努力をしてきたか。それを手助けし、時に励ましながらそばで見てきたのは、他でもない未沙なのだから。その彼女にあんな目で、ああ言われたら ――

自分が恥ずかしい ・ 腹立たしいという気持ちを、非難がましく見えた未沙にぶつけてしまっている事に、輝はまだ気が付いていなかった。

( 折角ミンメイと久し振りに会ったってのに! 未沙だって分かるはずだ。軍人になったのはミンメイを守るためだって、ちゃんと話してるんだから)

 この時、輝は未沙に甘えていたのかも知れない。「言わなくても未沙は、俺の気持ちが分かるはずだ」、と。地球で彼女を救った時に、彼は勘違いしてしまったのだろう。マクロスと地球とに別れてからずっと心の中に居続けた人が、自分を求めて胸に飛び込んできたから。いつも気丈に一人で立っていたあの早瀬未沙が、自分の腕の中に身を預けて守られたから ―― 「この人は、俺のものだ」と。

( 結局カムジンには逃げられたし )

『 早くね 』

 輝が追跡部隊に追いついた時、敵は丁度見失われた後であった。カムジンのやり方に慣れている自分がもう少し早く行けば、もしかすると確保出来たかも知れない。悔しい思いをして戻ってみれば ――

( ミンメイは帰った後だし )

悔しさも自己嫌悪も、懐かしい彼女に会えば吹き飛ぶと思った。マクロスにいた頃だって、そうだったのだ。いつだってミンメイは戦争なんかに関係なく明るくて、夢に溢れていて。殺伐とした気持ちも、目を背けたくなるような現実も、いつも忘れさせてくれた。

( 俺の事、覚えててくれたんだな …… )

彼女の中で俺は忘れ去られるような、その他大勢じゃなかったらしい。遠くからではなく、ミンメイその人を守れる位になれたらしい。それが嬉しくて気分が浮上しかけた輝の心に甦ったのは ――

『 あなた、中隊長じゃなかったの? 』

( 未沙だって報告、聞きもしないじゃないか )


 悔しいが逃げられた事を謝罪しようとしたら、彼女は上層部に呼ばれて先にマクロスへ戻ったと言われた。行けと言われたからミンメイと別れてでも向かったのに、命令した上官殿はその結果を直接聞きもしない。

( 上から呼ばれてまた任務、かよ )

輝はイスの背もたれに背中を預けて、天井を仰いだままグッタリと息をいた。徹夜の救出作戦から追跡までひと息入れる間もなくて、もうクタクタだ。少佐殿が呼ばれたのが、報告だか新しい任務だかは知らないが ――

「 “お疲れ様” のひとつ位、言ったらどうだってんだ 」

一晩中緊張した超過勤務で、本当なら家に帰って自分のベッドでゆっくり眠りたい。しかし夕方から新しいシステムの説明会があり、中隊長の輝は出席しなくてはならなかった。「仕方ないから仮眠室で少し寝るか」等と考えながら、輝の頭は背もたれの縁まで下がる。今朝までの事が脈絡なく次々と浮かんでは消える中で、鮮明に繰り返される顔 ――

「 ミンメイ、どうしたかな …… 」

最近時々に口にするようになった独り言を最後に、輝はそのまま吸い込まれるようにして眠りに落ちていった。

タイプライター
タイプライター
レトロなのは雰囲気作りで、実際は近未来的なキーボードだと思います

会議室 ~ side 未沙 ~

 早瀬少佐はひとり下座に立って、今回の救出作戦の子細を報告した。上座にはグローバルを筆頭に、将官らが座っている。出入り口の傍に座るクローディアの書類をタイプする音が、絶え間なく続いていた。無駄に広い室内に、尊大で居丈高な声が、苛立ちと焦燥を伴って響く。

「 奴等がまた新たな人質をとって、ふざけた要求をしてくるかもしれんな 」
「 敵の所在が折角掴めたと言うのに、取り逃がしたとは 」
「 潜伏先で一網打尽にすれば済んだものを、何故おびき出すなぞしたんだ。早瀬少佐 」
「 包囲するには、味方が少な過ぎでした。加えて、刺激すれば人質に危害を加える危険性があります 」
「 だが折角のチャンスを 」
「 奴等を潰せば、反抗するゼントラーディ人も減るだろうに 」
「 人質の救助が今作戦の第一目的であると、私は伺いました 」
「 それも無論だが、奴等の殲滅せんめつも重要だ 」
「 いつまで野放しにしとるんだと、市民の声が上がってきている。マスコミを抑えるのも、最近ひと苦労だ 」
「 政府からも次の選挙までには ――
「 私は命令に従ったまでです 」

淡々と質疑に応えていた早瀬少佐は、中将の発言を遮って平然と言い放った。背筋を伸ばして顎を引いた彼女は、まさに一本筋が通った立ち姿だ。しかしその様は、相手から見れば開き直りにしか見えない。

「 だから、奴等を何故捕えなかったんだ! それも、命令だ 」
「 敵のリーダー1人くらい、捕縛ほばく出来たはずだ 」
「 カムジン達は、今各地で起きている突発的な暴動グループとは違います。彼等は訓練された武装兵で、目的に沿って計画的に行動する部隊です。加えて戦闘力だけでなく、引き際の見極めも統率も通常の部隊より格段に優れています 」
「 できない理由を並べるな! 我々が君に問うているのは、どうすれば、奴等をこれ以上、のさばらせないか、だ 」
「 まあ待て。相手は戦争の為の人造人間 ―― つまり人間じゃない。我々に無理なら、あの …… なんて言ったかな? ゼントラーディの女がいたろう 」
「 ああ、ウチのパイロットと結婚した女か 」
「 ふはは。毒には毒を、か 」

上座に嘲りと好色な空気が漂い、未沙は眉をひそめた。

「 ゼントラーディ人なら戦好きだろうから、そいつにやらせればいい。仲間同士、心大きなく死ぬまで ――
「 彼女にはまだ1歳にもならない子供がおります! 閣下らは一体 ―― うん、もう! なによ、クローディア 」
落ち着いて ―― 申し訳ありませんが時間の関係で、そろそろまとめに入って下さい 」

未沙の腕を引いて小声でいさめたクローディアが、上座に対して事務的な声で進行を告げる。

「 まとめも何も。今後もカムジン一派を捕えるか、叩き潰すかだ 」
「 早瀬少佐も色々言いたい事はあるだろうが、とにかく今後はこの任から外れてもらおうか 」
「 我々を脅迫するなぞ、野蛮人の癖に小賢しい。人質で奴等を安心させておいて、いっそ全部吹き飛ばせばよかったんだ。世論に非難されても我々は救助の命令を出してるんだから、現場のミスって事で ――
「 何て事を …… ! 」

「 諸君、止めたまえ! 軍の存在をなんだと思ってるんだ 」
「 し、しかしグローバル総司令 」
「 今回の件で、どれ程我々が叩かれるか。最近市民も生意気になってきて ――
 「 …… あんまり失望させる事を、言わんでくれたまえ …… 」

新・統合軍のマークを背にしたグローバルは、額を抑えて弱々しくかぶりを振った。クローディアがすかさず立ち上って出口へ行き、両開きの扉を大きく開ける。

「 申し訳ありませんが、お時間です。皆さま、ご退出願います 」
「 ラサール少佐、君は黙って ――
「 えー、次にここをご使用になるのは …… “マクロス妻の会” の奥さま方ですね 」
「 え゛」
「 今回は閣下方の奥さまもご出席されるのでは? 」
「 い・いや …… 」


 サッと席を立って出ていくグローバルの後をソソクサと付いて出て行く一団に対し、未沙の傍に歩み寄ったクローディアは笑顔を彼等に向けたまま小声で言う。

「 シッシッ! 早く出て行けばいいんだわ。慌てて会議を開いたかと思えば、選挙とかマスコミとか。自分達の身を守る事しか考えない、小心者のおじさんばっかり 」
「 何であんな人ばかり出席してるのよ 」
「 話が分かる人は、全員エキセドル参謀の会議の方へ出てるのよ。だからあなたはハズレばっかなワケ 」
「 あなたは出席しなくて良かったの? 」
「 総司令と私は、コッチのお世話。閣下方があなたを呼べってうるさいから、どうせロクでもない事だろうって思ってね 」
「 あれで軍人だなんて、恥ずかしいわ。何のために軍にいるのかしら? 」
「 地位と名誉のためでしょ ―― 自分達の。あなたを任務から外した事で責任を押し付けられたって、安心したんじゃない? 」
「 …… その為の “最終的には現場に任す” のひと言ね。そんなの分かっていた事だけど、やっぱりガッカリね 」


 初めは小声で話していた未沙とクローディアは2人きりになると、ドアの外を確認してから遠慮ない声でやり取りする。会議の後片付けを手際よくして、隣室の準備室に入った。

「 グローバル総司令があなた達のやり易いように、って配慮したのもあるのよ? 」
「 総司令のいつもの “お手上げ丸投げ” じゃないの? 」

未沙は髪を手で払いながら、クールに言い放つ。グローバルは良くとれば大局的な見地に立って決断すると言えるが、悪くとれば詰めが甘いまま見切り発車するとも言えるのだ。細部を組み立てて手配する立場に当たる事が多い未沙に言われてしまえば、総司令であっても「まあ、早瀬君。悪いがひとつ頼むよ」と苦笑せざるを得ないだろう。

「 まあ、そうクサリなさんなって。早くあなたが偉くなって、本当の意味で現場に “任せた” って言ってあげて頂戴 ―― それにしても未沙、顔色が悪いけど大丈夫? 」
「 ええ、平気よ 」
「 でもあなた、一睡もしてないんじゃない? もうお帰りなさいな 」
「 そうはいかないわ。16時からシステムの説明会があるもの 」
「 準備なら私がやっておくわ。総司令もお考えがあっての事だけど、あなたに色々やらせ過ぎよ 」
「 考えって? 」
「 あら、失言。ごめんなさい、今は言えないの 」
「 …… もしかして、例の会議絡み? 」

夏を過ぎた辺りから上の方で何か大きな計画が動いているようで、グローバルやエキセドルを初めとした軍内の実力者達が集まる会議が頻繁に開催されていた。厳重な緘口令かんこうれいが敷かれているようで、一切部外者に内容は漏れていない。総司令補佐官のクローディアは当然出席しており、その内容を知っていた。

「 う~ん、答えられないわ 」
「 と言う事は、そういうコトね 」
「 アラ? 私は何も答えてないからね 」
「 ええ、あなたの言いたい事は、よーく分かったわ 」
「 うふふ。あなたも心の準備をしておいて? “女は” とか、いつまでもオジサン達に言わせないように頑張って頂戴ね 」
「 えぇ? 一体何があるのよ 」
「 近い内に分かるわ。さっ、軽く食べてからお休みなさいね 」

Moment of fun tea
紅茶

 クローディアが紅茶をティーカップに注ぐと、辺りに華やかな香りが漂った。

「 だから、16時から ――
「 ハイ・ハイ。お約束通り、ローズ・ティーよ。閣下方の為の高級茶葉だから、きっと美味しいわ 」
「 さっき出さなかったの? 」
「 アッチは出涸らしのお茶で充分。分かりゃしないわよ。このお茶は私達みたく、価値が判るオンナに飲まれたいんですって 」
「 まあ。大した仕返しね 」
「 可愛いモンでしょ? 」

向かい合ってテーブルにつき、2人でつかの間のティー・タイム。未沙は親友とのいつもの時間に、ずっと続いていた戦闘体勢を解く。

「 ねえ、ミンメイを救助したのって一条君なんでしょ? で、どうだったの? 」
「 どうって …… 」
「 … 何か、あった? 」
「 何も 」
「 あなた、またクラ~イ事考えてるんじゃないでしょうね? 言っとくけど、一条君だって今更あの子と ――
「 分かってるわ。輝が …… 」

クローディアの忠告を遮った未沙の口は、しかしその先の想いを言葉に出来なかった。言の葉には力が宿り、言霊ことだまと言うものがこの世にはあるのだ。




ホテル ~ side ミンメイ ~

「 何だって君は、いつもアイツ等を庇うんだ! 」
「 私達、助けてもらったのよ! 」

 カイフンとミンメイは帰る車内では押し黙っていたが、ホテルの部屋のドアが閉まるなり爆発した。最近は互いの内で溜め込んできた思いが噴き出して、険悪になる事が多かった。しかし怒りをこれ程までにぶつけ合うのは初めてだ。

2人は座りもせずに向かい合い、言い合う口は強くて鋭い。カイフンは腕組をしてミンメイを見下ろし、ミンメイは一歩も引かずに顔を上げて睨む。彼女の手は以前のように願いの形に握り合わされる事はなく、戦う気持ちのままに拳で両脇に降ろされていた。

「 助けて当たり前だ。ヤツらはそれで食ってるんだからな 」
「 どうしてそういう言い方しかできないの? いつも、いつも! 」
「 本当の事だろう 」
「 ううん。兄さんは間違ってる 」
「 なんだと? 」
「 反戦 ・ 反戦って言ったって、兄さんは何もしてないじゃない! 」
「 ミンメイ …… 」


 だったら各地に慰問コンサートをして来たのは、なんだったんだ …… ? 「いつか巨人もたくさん入れる大きなコンサート・ホールで最高の歌を聞かせて、地球人もゼントラーディ人もなく感動させよう」と語り合ったのは、本心じゃなかったのか …… ?

ミンメイは時々の気分で物を言う所があるが、厄介なことに本人はその時は真剣で。だから理屈ではない人の心に訴える彼女の力を宿したその言葉は、絶大な力で相手を感動させて魅了しまうのだ。当のミンメイは一時の感情でした言動など忘れて次に行ってしまうのだから、相手は振り回される。そこが彼女が “小悪魔的” と言われる所以ゆえんのひとつかも知れなかった。

カイフンはその事を知っていたし、それこそ “ミンメイの才能 ・ スター性” と捉えていた。しかし歌への夢については一時の感情ではなく、心の底からの想いだろうと信じていた。何故ならそれは、子供の頃から彼女を見ていたから。歌っている彼女を見ていれば、分かる事だったから。

「 いっつも口ばっかり。今日だって輝が来てくれなきゃ私達、殺されてたかも知れないのよ! 」
「 あいつは仕事だから来ただけで、別に俺達じゃなくても同じさ 」
「 ううん、違うわ! 」
「 じゃあ、何かい? 君だからアイツが来たって言うのか? 」
「 そうよ! だって輝はいつだって、私を助けてくれたもの 」
「 馬鹿を言うな。助けてきたのは、俺だ 」


 奴等の撃ち合いで崩れ落ちる瓦礫がれきの中を、身をていして君を守ったのは俺だろう …… ? 激しい戦火や破壊されたホールを見て、何度も挫けそうになる君を支えたのは俺じゃないか。君と一緒に疲れ切った人々を励ましながら平和を語り合ったのは、他でもない、俺だ!

心から君を愛し、いつも君の為を考え、ずっと君の傍にいたのは、俺だけ ――

「 兄さんはちっとも私の事なんか考えてくれない 」
「 何を言ってるんだ。俺はいつだって君の事を ――
「 話も聞いてくれない 」
「 それは君が現実を見てない事ばかり言うから ――
「 兄さんは私を、自分が思うようにしたいだけよ! 」
「 いいかい、ミンメイ。俺は ――

ミンメイはカイフンを非難する事はあったが、ここまで否定した事はなかった。彼女は従兄を慕っていたし、公私に渡る全てを彼に頼っていたからだ。しかし駐屯地でカイフンに立ちはだかった時。輝と再会した時。ミンメイは、自分の本当の想いが分かった ―― もう抑えはしない。

「 現実を見てないのは、兄さんの方だわ。今日だってあの人達に “反戦” だなんて、通じるわけないじゃない! 私の歌だって通じなかったんだから 」
「 はっ! 何言ってるんだ。君だって分かってるだろう? 最近の自分の歌がどんなか 」
「 分かってるわ! だから私、もう兄さんの言う通りになんてしない 」
「 思い上がりもいい加減にしろっ! 俺がいないと何も出来きないクセに 」
「 私、兄さんの人形じゃない! ちゃんと自分で考えて、できる 」
「 何が “できる” って? スポンサーに愛想どころか、笑顔ひとつも出来ないクセに 」
「 ステージでちゃんとやってるんだから、いいじゃない! 」
「 ステージに立つために、それ以外でも必要なんだ。いつでも君は輝く笑顔と歌声で、人々を魅了させなきゃならない。自分の感情ひとつコントロール出来ないようじゃ、プロ失格だな 」
「 ひどいわ …… 」

カイフンはあのボロボロになった街を見て、何も思わなかったの? 心が痛まなかったの? ひと言目にはスポンサーや観客の受け、ふた言目にはお客さんの人数とお金の事ばかり ―― なんて自分勝手で、冷たい人だったのかしら。


 ミンメイとカイフンは、今や完全に擦れ違っていた。互いの足りない所にばかり目が行き、苛立ちを募らせる。かつて認め合って自分に必要と感じた部分すら、既にマイナスに見えた。

「 プロの自覚があるなら、俺が組んだスケジュールはちゃんとこなしてもらう 」
「 もう、兄さんの言う事を聞くなんてイヤよ! 」
「 じゃあ、歌手を止めるんだな。歌わない君など、どこにでもいるちょっと可愛い女の子だ 」
「 そんな事ない! 歌わなくったって …… 」
「 そんな自分で、君は満足できるのかい? 」

それでもカイフンはミンメイの歌の才能と情熱を信じていたし、かつての高まりはなくても未だ愛してもいた。だから彼女の音楽への心に投げ掛けたのだ。

それなのに ――

「 で・でも、輝なら …… 」
「 結局はアイツ、か …… 」

まだ愛するという事が、幼いミンメイには分からないのかも知れない。彼女は俺の求めに乗ってしまっただけだったのだろう。だから結婚も承諾しなかったし、相手の弱さを知れば離れてゆく。優しく大事にしてくれるなら、多分俺じゃなくてもいいのだ。

「 そんなにアイツがいいなら、俺はもう止めないよ 」
「 そんなコト …… ! 」
「 ただ仕事だけはちゃんとやってくれ。これが守れないような君じゃないよな? 」
「 カイフン兄さん …… 」
「 今日は別の部屋を取るよ。君はここで休むといい 」

カイフンは荷物を持つと、部屋から出ていった。ミンメイはベッドに力なく座ると、糸が切れたように横に倒れる。心の内をちゃんと言えたし、カイフンにも負けなかった。それなのに胸のすく思いも自信も生まれては来ず、ただ虚脱感だけが残る。


 仲の良かった学校の友達や親衛隊のみんなは、もう卒業して新しい世界に入ったり、恋人ができて交際に夢中だったりしていた。折角もらった連絡にも忙しさの余り ―― いや、彼等よりも歌やカイフンとの事を大切にする余り、相手に返してこなかった。

いつの間にか連絡も来なくなり、しかし自分の知らない事で楽しそうな様子だったのを思い出せば、こちらから連絡する気にもなれず …… 。

( みんな、いなくなっちゃった …… )

カイフンは彼女がいま歌の次に気にしていた、痛い所を突いてしまったのだ。ミンメイはのろのろと頭からベッドにもぐり、中で小さく丸まった。ひとりぼっちが、ひどく心細い。毛布に包まれていても不安で、寂しくて。


『 単に、物珍しかっただけさ 』

 信じていたものが崩れゆく不安と恐怖 ―― ミンメイ一人で立ち向かうには、余りに大きな試練だった。

( カイフン兄さんにも、いなくなられちゃうのかしら。私 …… )
「 輝 …… 」

ミンメイは最近の口癖となった昔の友人の名前を、ひとりつぶやいた。

おわり

あとがき

男は事実を・女は感情を、重視する
「もう好きな訳じゃないから、別に問題ない」と、あっさりしている輝でした。こうはしてみましたが、この位は彼でもマズイって分かるかなぁ。「男は~」は浮気した夫が「身体だけだし、もう終わったから」と忘れるのに、妻は「身体だけでも浮気した、その気持ちを問題にしてるのよ」と忘れない ―― という恋愛相談?から採用しました。…… ちょっと例えが悪過ぎ?

ミンメイとカイフンのドロドロ模様
楽しくて止められない。他イロイロ面白くて、つい長くなり過ぎました。土井美加さんが「一生懸命じゃないと、いやらしいじゃないですか、早瀬未沙のセリフって」とおっしゃっていた(『超時空要塞マクロス』のヒロイン・早瀬未沙と私 - 声優・土井美加)ので、TVで見るより泥臭い人間模様があったのでは? と盛り上がってしまいました。みなさんも、ウダウダ ・ グダグダ ・ ドロドロのマクロス、いかがですか?

ちなみにSS「アイ・ドル」は「I Doll」とも掛けておりました。色々含み過ぎだったので、当時は伏せていましたが、丸分かりだったでしょうか。

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