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「SS (二次創作小説)」
空白の二年間

かなし かなし と云ふ心

 うわさシリーズSS 輝編 ―― と言うほど、軽くない。重いです。ボドル・ザーによる地球攻撃を経た輝と未沙の関係と、絆を描きます。ビック・エスケープ直後と戦後処理に奔走している頃の、2つの時期です。
2011.11.28 UP


「 えー・・・。では一条輝、マクシミリアン・ジーナス、柿崎速雄の無事生還を祝って ――


カンパーイ!


 パイロット部隊だけの、生還祝賀会。自分の無事を祝ってくれるのだし ・ タダだし、で、普通なら嬉しいはずだ。しかし輝がそうは思えなかったのは、店を借り切った男ばかりの酒の席が “ なんでもアリ ” だからだ。輝はこういう感じが好きではないので、2つの先輩グループの間で正直辟易しながら座っていた。

どういう感じかと言えば ――

「 お前、やるねぇ 」
「 俺の武勇伝、もっと聞かせてやろうか? 」
「 今度は急所にズキュンとくるヤツ、頼むよ 」


 女の話は中学生頃から、さんざん父のアクロバット・チームの男共から聞かされた。輝は童顔の割に、意外にも体の成長が速かった。声が変わればからかわれ、喉仏が出れば冷やかされ。「もうキスはしたか?」「 恥かかないように、ヤリ方を」 ―― なんて、日常茶飯事。

彼等の余りの開けっぴろげ振りに、「大人になると繊細な神経を忘れてしまうのか?」と思ったものだ。

「 一条は女、まだ知らねーのかよ 」
「 コイツ、誘っても行かねーもん 」


 「そら来た!」と思った。輝のように十代後半で入隊した者は、男達にとっていい酒のさかなだ。チームの頃だったら逃げ出したが、今は一応仕事上の相手なので、ある程度は付き合わざるを得ない。


「 イイ子、紹介してやろうか? 」
「 いや、いいです 」
「 間に合ってる、てか? 」
「 そうそう! コイツ、早瀬未沙と仲良しだもんな~ 」
「 ひゅ~っ! あの早瀬! 」

 一緒にゼントラーディ軍から脱出してきた事で、安易にくくって話題にされるのはありがちだった。そういう意味ではマックスや柿崎が彼女とくくられてもおかしくないのだが。2人とも女性関係には適度にさばけているので、ネタとしては輝が相手にされてしまうのだ。

こういう時は下手に相手をしない方が、短時間で終われる。


「 お前、気を付けろよ。あの手の女は面倒だぞ 」
「 1回ヤッただけで、“ 責任取って結婚しなさい ” とかな 」
「 こっえぇ~! 早瀬提督に “ お嬢さんを下さい ” って、キビシー 」
「 スタイルよさそうだから相手してもいいけど、結婚はなぁ …… 」
「 ちょっと、細いよな。俺はボィーン! キュッ! ボン! 派だから 」

 酒に酔った先輩は、身振りで “ ボィーン 何某なにがし ” とやらをやってみせる。輝は飛ばされるツバにも、振り回す手にも ―― 何より、話に辟易していた。


  ( 何が1回 ・・・ だ。大尉にだって選ぶ権利がある )

 捕虜になった時に早瀬未沙と話をした事で、確かに「いけ好かないイヤな上官」から「意外と話せる人」に変わった。「危機を共に乗り越えた仲間」、という意識もある。輝が中隊長に昇進した事で、仕事上のやりとりもかなり増えた。

 しかし、 “ 仲良し” 等と言われる関係ではない。むしろ意見の違いや、態度がどうとかで言い合う事が多く、せいぜい “ ケンカ相手 ” くらいだ。


  ( 確かにスタイルはよさそう、かな? )

 彼女の宇宙服姿を思い返せば、そんな気もする。いつも堅い軍服姿しか記憶になかったから、初めて見た時には意外な肩の線のなだらかさや、腰回りの頼りなさに驚いた。ぴったりしたデザインなので、体の線が露わになるのだ。

 輝も男だから出る所は出た方がいいが、 “ ボィーン ・ キュッ ・ ボン! ” の女性というのは迫力があり過ぎて、少々苦手だ。それはエア ・ レースの際に過剰な露出をしていた、レース・ガールの存在があったかも知れない。まだ男性として未成熟だった輝には、ちょっと露骨過ぎで ―― 正直に言えば、嫌悪に近い物を感じた。

女性はやっぱり可愛い子が、自分の好みだと思う。


 馬鹿騒ぎをするグループの反対の席では、2人のやや年かさの男が話していた。彼等は戦闘機乗りとしてのキャリアが長く、輝も実力を認める者達だった。

「 早瀬は、指揮官としてはかなり使えるな 」
「 まあな。色々うるさいけど、それは認めざるをえん 」
「 確かに、ウルサイな 」
「 痛いトコ、突くんだよなぁ 」
「 手抜きすると、バレるぜ 」
「 アイツ、ここが初めての実戦だろ? 」
「 ―― すっげーな。俺達、しっかり力量を見切られてんだ 」

  ( え …… そうなの? )


 「早瀬未沙は、実戦はマクロスが初めて」という事実に、輝は驚く。ミーティングを聞いているので、大尉が優秀なのは分かっていた。“ 異星人との宇宙空間での交戦 ” という、未知なる状況。限られたデーターでしか分からない敵や戦地と、ベテランと新人とが入り混じって動きが予想しづらい自軍 ―― そんな状況でも彼女が説明する作戦は、戦闘員全員に分かりやすく的確だった。

 それでも輝は、宇宙軍の士官学校で体系だった戦術を学んでいれば、情報収集や作戦の立案はお手のものだろうと思っていた。しかし早瀬未沙は、それだけではないのだ。実戦における状況判断も指示も、迅速かつ的確。それは経験からくるものだろうと思っていたが、違っていたらしい。

 元々マクロスは進宙式の後、地球の衛星軌道上を回りながら全隊で宇宙空間での戦闘訓練をする予定だった。それがいきなりの異星人からの攻撃に始まり、突然のフォールド、戦闘に次ぐ戦闘。そんな中で早瀬未沙は当たり前のように作戦を指示し、味方に徹底させた。


 あれはミーティングで当時中尉だった彼女が、作戦を説明していた時だ。ちなみに作戦は、早瀬未沙を含む参謀グループが共同で立案する。彼女はそれを戦闘員やオペレーター等に伝え、充分に理解をさせて徹底を図る役割だった。

『 そこ、聞いてるの !? 聞かないなら、出て行ってもいいのよ 』
『 スンマセーン 』
『 命令です。出て行きなさい 』
『 ハァア ・・・ ? んなコト聞けるか 』
『 私には、この作戦を伝える責務と権限があります。私の言葉が聞けないのなら、戦闘に参加させません 』
『 女の命令なんか、聞けないね 』

『 上官の命令は絶対です。命令系統とは、迅速な作戦遂行のためにあります 』
『 だからナンだよ 』
『 各自が自分の考えで動いて無駄な力や時間を消費しないために、命令という徹底した上下関係が軍隊には存在します 』
『 上下、ね 』

『 戦闘の一瞬の乱れが、生死と勝敗を分ける。 あなた、死にたいの? 』
『 …… ッ 』
『 私は指揮官として、あなた1人の為に、味方を危険にさらせないと判断します 』
『 …… 』
『 それが軍隊、です 』




「 アイツの言いたい事は、分かるが。やり方が、な 」
「 女じゃないけど “ アタシの気持ちも考え て” って、感じか 」
「 ハッ! 俺らの方が女かよ。 しかしアイツも若いせいか、徹底し過ぎだ 」
「 やり込めちまってるからな。俺らみたいなオッサンならいいけど、若けぇ奴なんか話も聞かずにカッチーン!だ 」

  ( 俺の事か …… )


 輝はマクロスに乗船する前まで、実力主義のエア・レーサーの世界で、面倒見のよい気さくな人達と過ごしてきた。そんな彼にとって早瀬未沙の “ 命令です ” というような言動は、「上官風を吹かせた、任務第一主義の “ 軍人 ”」に感じられて、反抗心を刺激されたのだ。

 幼い頃は、女性と言えば祖母や近所のおばさん。普通女の子を意識し始める年頃には飛行機に夢中で、輝の女性観は単純であった。


『 女は軍人なんかやらずに、料理をしたり、歌でも歌っているほうが、よっぽど可愛気があっていい 』


 そんな輝にとって、男とも対等に渡り合おうとする早瀬未沙は「女のクセに」というような気持ちにさせられる女性だった。

「 もっと上手く男を扱えばいいモンを 」
「 “ 上手く自分の女を使え ” ―― だろ? 」
「 折角 シャン – 美人 - なんだから、ちょっと笑っておホメのひつでも言やぁ、ホイホイ言う事聞くのにな 」
「 まあ、お嬢だからな。頭はよくても、男の事は分からんのだろ 」
「 プライド、高そうだしなぁ …… 」
「 自分が軍務に厳しいのはいいが、他人にも同じく求めるからな 」
「 提督仕込みの、 “ 軍人としての誇り ” なんだろうよ 」
「 そこが、若い奴等とズレてんだけど 」
「 んだな。フォッカー少佐も言ってたが、そこが分からん以上、早瀬の指揮官としての能力も頭撃ちだ 」

  ( ズレ? “ そこ ” って、ナンだよ )


 いつの間にか彼等の話に引き込まれていた輝が、大事な点を聞こうと口を開きかけた時 ――

「 早瀬? 早瀬未沙で、ありマスか? 」
「 チッ ・・・ 。うっとおしいから、来んなよ 」
「 そんな冷たい事、言わんで下さい 」
「 ホレ、向こう行け。ここは30禁だ 」
「 うほっ! 30って、どんだけスゴイ事話してるんスかぁ~ 」
「 ガキには、教えらんねぇな 」

「 早瀬未沙で、スゴイ事 ・・・ って言ったら、軍服プレイでしょうか? 」
「 まあな。そんなトコ 」
「 ああいう、ツンとしてプライド高そうな女に言う事聞かせるって、燃えるぅ~ 」
「 “ そこじゃありません。アソコです ” なんて、命令されちゃったりして 」
「 あの女にゃ俺たちゃいつも泣かされるから、逆に啼かせてやりたいぜ 」
「 “ やめてぇ ” とか “ イケナイ ” とか言うのを、無理矢理 ――


 輝はそこで、席を立った。早瀬未沙との関係は、卑猥な話題にされるのを聞いていられる程度に浅いものでもない。


『 中学の頃から、ずっと軍隊しか見てないわ。任務の事で、頭が一杯 』
『 私なんか、任務が恋人がわり …… 』


 あの清潔そうな女性のこんな話を聞いてしまったら、彼女が可哀想だと思った。本人は知るよしもないだろうが、仮に知ったなら傷付くに違いない。


かなし かなし ・・・


 実力があっても女というだけで、あっという間にこんな話題のタネに堕される。「軍人としての誇り」をよく口にする早瀬未沙の白い軍服は、彼等にとってプレイの興奮材料になってしまうのだ。

「 大尉 ―― こんな “ 男 ” って、イヤだろ? 」

 輝には女心も分からないし、複雑な思考もない。けれど早瀬未沙が何故 “ ツン ” としているか、分かるような気がした。軍内でも大分女性が増えてきたようだが、男に指示を出すような立場にいる者はまだ少ない。本当は慣れない実戦指揮も、ナメられないように ・ 不信を持たれないように、様子を作っていたのかも知れない。自分の判断ひとつ、タイミングひとつで生死を分けるかも知れない相手に指示を出すのだ。

その重圧を中隊長となった輝も、分かり始めていた。

「 俺も、嫌いだよ 」

 街の灯りも、雑踏の音も ―― 自分を取り巻く全てが、やけに軽薄に感じて虚しくなる。こんな所には、いたくない。


 ひとり夜道を帰る輝にも、その頃戦闘データーを整理していた未沙にも。同じマクロスの夜が降りていった。


繁華街のネオンを見上げる輝


 輝は通常勤務を終え、ひとり食堂で一時休憩をとっていた。中隊長としての管理業務が格段に増え、もうひと働きもふた働きもしないと間に合わないのだ。

 当時は中隊長が他に11人いたが、年若い輝がグローバルに重用されているのは一目了然だった。それが、アポロ帰りのエリート軍人達には面白くない。“ マクロスで活躍した猛者モサ ” と聞いてはいても、彼等が直接それを見た訳ではないのだ。

「 先輩も、こんな苦労したのかなぁ … 。そんなの聞いたことなかったけど、ちゃんと聞いとけばよかった 」

 輝は中隊長になった時にフォッカーにもらった、彼自作の「隊長心得」を今でも読み返す。それは VF-1Sロイ・フォッカー・スペシャルと併せて、形見と言えた ―― 死してなお支えになる彼は、輝にとって兄のような存在だった。

「 先輩 …… 字なんかじゃ、分からないよ。俺が読むの苦手なの、知ってるだろ 」


 この席はフォッカーに教えてもらった穴場で、目隠し代わりになるついたてのお陰で、誰に見られることなく1人でいられた。

 輝はアクロバット・チームをまとめる父を、スカル大隊を率いるフォッカーを見て来たので、男の集団のリーダーシップの取り方というのを肌で理解している部分があった。しかし嫉妬やエリート意識で固まった相手に、上手い対応など分からない。


「 一条君。やっぱり、ここにいた 」
「 ああ、大尉。お疲れ 」
「 お疲れ ―― と言うか、あなたってば、 “ もう満腹です ” ってカンジ? 」
「 ん、カンジ。 メシ、もう食べました? 今日の日替わり、結構いけるよ 」
「 そう? 情報ありがと。でも夜遅くは、頂かない事にしてるの 」
「 ふ~ん。太るから、とか? 」
「 そんなトコ。コーヒー持ってきたけど、飲む? 」
「 飲みます ・ 飲みます! 」

  ( もうちょっと、肉付けた方がいい位だと思うけど。女って、すぐ “ 太る ” とか言うよな )


 早瀬未沙はセルフのコーヒーを2つ持っていたので、輝は当然自分にくれるのだろうと思っていた。ちなみに未沙は紅茶党だが、それはリラックスしたい時の飲み物だ。朝や仕事の時はコーヒーを好む。

「 はい、ガソリン。最後の追い込みに、ドーゾ 」
「 ごちそう様です。そろそろ食後の眠気を覚まさなきゃ、って思ってたんだ 」
「 こう連日遅くまで残業続きじゃ、参っちゃうわね 」


 しばし2人でコーヒーの香りと味を楽しみ、沈黙が訪れる。決してよい豆ではないが、食糧難のこの時期には贅沢品だった。


うず巻きコーヒー


 そんな時、ついたての向こうに座った集団がいた。

「 はぁ ・・・ 。マイッタ ・ マイッタ 」
「 チッ。日替わり、また豆だぜ 」
「 こんなに働いても、この待遇! 」
「 朝から晩まで飛び回って、挙句に怒鳴られ! 」
「 …… 早瀬大尉、今日すごかったな 」
「 何が気に障ったんだか。普段顔崩さないのに、いきなり怒鳴られたぜ 」
「 美人が怒る顔って、怖ぇ~よ 」
「 ―― 俺、怒鳴る女って萎える 」
「 んだな。ありゃ、男は大変だ 」


 輝は話の方向を察して隣に止めに入ろうかと思い、腰を浮かせた。そこを未沙が引き止める。彼女はまだ気付いていないようだが、この流れはマズイ。女性には聞かせたくない。

「 いいから言わせておいて。しっかりご意見を頂こうじゃないの 」
「 いや、止めた方がいいよ 」
「 いいのよ 」


そんなやり取りをしている内に、隣の話は進む。

「 ベッドでも “ しっかりしなさい !! ” とか、言われんのかね 」
「 俺、勃たねえ 」
「 俺も。てか、あの大尉とベッド ・ インしようっていう勇気ある男がいるか? 」
「 居んじゃねぇ? 物好きも ―― 一条とか 」


ガターーン!


 途端に未沙のイスが、大きな音を立てて後ろに倒れた。ハイ ・ ヒールのかかとを鳴らして、隣にツカツカと踏み込む。

「 あなた達! 業務上の意見なら聞くわ。でも中傷は、断固として許しません 」

  「 「 「 「 「 大尉 …… ! 」 」 」 」 」

「 軍務と私情を混ぜるなんて、軍人としての誇りはないの? 」


 まさに話題の人の急な登場に男らは唖然としていたが、未沙の言葉にすぐ気を取り返して開き直る。後ろから輝が付いて来たのも、その一因かもしれない。

「 大尉殿。そーゆーご自分は、職場でデートですか? 」
「 違います。ただ一緒に休憩していただけです 」
「 ヘエ~~ェ? 」
「 それより恥ずかしくないの? 意見があるなら、私に直接言えばいいじゃない。そんな ――
「 軍人としての品位 ―― とか、ですか? 」
「 そうよ 」
「 フンッ! これだから、お嬢さんには困るよ 」
「 そうだな。頭でっかちで、現実が全然分かってない 」


 男達はさっきまでのニヤケづらを一転して、険しい雰囲気を醸し出す。

「 軍人 ・ 軍人 ・ 軍人! ―― 俺たちゃ、好きで軍人やってるワケじゃねえ 」
「 アンタみたく、ちゃんとした学校行って、始めから肩書き付きじゃねえんだ 」
「 命懸けでも、下っ端でも、仕方なくやってんだ 」
「 金だよ! 仕事がないから、軍隊やってんだけだ 」


 輝は懸念していた事が実際の物となり、慌てて間に入ろうとした。しかし未沙は彼等を睨んだまま、輝の腕を掴んで小声で言う。

「 いいのよ、一条中尉 」
「 でも …… 」
「 これは大事なことよ。指揮官として、私が知るべき事 」

「 なにコソコソしてんだよ。いつもアンタ、 “ ちゃんと指示を聞きなさい ” って怒鳴るだろ 」
「 俺らの話は、聞けねェってのか? そこの小僧と一緒になって、馬鹿にしやがって 」
「 いいよな、アンタらは。命張らないで済んでんだから 」
「 おエライ大尉殿なんか、報告書の数字見て “ 今日は敵が何人、我が軍は何人死んだから、効率が悪い ” なんて、言ってるんだろ 」

「 誰に言ってんだッ! 」

バシッ!


 余りの暴言に輝が飛び出したが、それより早く未沙が言った男の頬を叩いた。

「 なに ・・・ 言ってるの? 」
「 ~~~ ッてーな! どうせ俺達なんかアンタら上から見たら、ただの数字って事だよっ! 」
「 …… 本当に、そう思ってる? 」
「 だから言ってやってんだろ! 俺達を、効率よく殺すのが、アンタの仕事だ 」
「 私の任務は殺すのではなくて、生かす事よ 」
「 エラそうに 」
「 私の指揮からそれが分からないのだとしたら、それは私の責任です。これからどうすべきか、考えます 」
「 ・・・・・・ 」

「 仕事がないから軍人になった、と言ったわね。お金をもらうため、とも 」
「 ああ 」
「 なら下らない中傷を吐いてる間に、仕事をなさい。今日拝見した感じでは、そんな暇ないハズよ。あなた方のここでの動機や目的が何かは、ご自由に 」
「 んだと! このアマ、澄ましやがって! 」
「 ただし! 報酬とは、仕事の成果と引き換えに受け取れる物です。軍は当然、対価に見合った働きをあなた方に要求します。今着ているその軍服や、食べているその食事が、どこから来てると思ってるの? 」
「 ・・・・・・ 」

「 頭が冷やせないなら、まとめて仲良く営倉に入れてあげるわ ―― ドーソン准尉 」
「 なっ …… ! 」
「 自分も、大事なパイロット達も、数字なんかにおとしめないで ―― ミハイロフ准尉 」


悲し 悲し ・・・



「 部下の指導は、隊長の責務。一条隊長、後は頼みます 」


 未沙は彼等の顔を一瞥いちべつすると、輝を振り返って言った。聞き付けて集まった周囲には目もくれず、規則正しいヒールの音を鳴らしながら去っていく。

「 んだよ! ワケわかんねえ事ばっか、言いやがって! 」
「 おい、止めろよ 」
「 お前も分かんねぇだろっ! いっつも自分は正しいって、威張りやがって! 俺達の事、悪いって決め付けやがって! 」
「 もう止めろよ。あの人、俺達の名前ちゃんと ――
「 この冷血漢! 理屈じゃねえんだ! 俺たちゃ、人間なんだっ! お前なんか女じゃねえ。だから鬼って ――


「 お前、後で俺の所に来い 」


 未沙を追いかけて離れていた輝が、振り返ってわめいている男に言った。決して大きくはない低い声は、だがしかし確かにそこにいた全員に聞こえた。

 彼らがそこまで言うのは、言葉にはし切れない何かがあったのかも知れない。それ程ゼントラーディ残兵との白兵戦は、肉体だけでなく精神をも蝕む凄惨さがあったのだ。今の生き残りの人々を救助する任務も、生物だったモノとう方が多いくらいだ。隊長として、それはそれで聞いてやろう。

しかしその前に男として言ってはならない事というものを、同じ男として分からせてやらねばならない。


  ( でもその前に、大尉だ )

 最近輝は早瀬未沙が出す言葉や表情と違う感情が、彼女から自分に流れ込んでくるような気がしていた。それにハッキリ気がついたのは、壊滅した地球で彼女を救った頃だろうか?

―― 鋼のように気丈な早瀬大尉も、その内側では深く傷ついているはずだ。


 輝が去った後に、残された彼等に近づく隊長とその妻。

「 君達、僕と一緒に来い 」

  「 「 「 「 「 ジーナス隊長 …… 」 」 」 」 」

「 これから夜のパトロール、とシャレ込もうじゃないか 」
「 いいな! マックス。私も ――
「 ミリア。君は帰ってなさい。これは男の仕事だ 」
「 そうか …… そうだな、マックス。私は地球の男が女を人前で汚すのを、初めて見たぞ 」
「 だからお仕置きさ。夕食は冷蔵庫の中だよ。面倒がらずに、ちゃんと温めるんだ 」
「 また爆発しないといいんだが。 私が夕食をクーイッパグレ? したら、お前達のせいだからな 」
「 じゃあ、その分も予め上乗せしておくよ 」
「 …… 私はクーイッパグレるという事か。マックス、こいつら死なない程度にやっておいてくれ 」
「 OK 」

「 さて ―― 君達には、体で分からせてやろうか? 」


( 一条先輩。男として男には、僕が分からせてやります。だからあなたは男として、早瀬さんに分からせてやって下さい ―― そんなに我慢しなくてもいいんだって事 )


艦外テラスから見たマクロス・シティの夜景


 艦外テラスの重いガラス製のドアを開けると、輝の顔に夜の冷たい海風が吹きつけた。前方にはマクロス・シティの夜景が一望でき、どこが繁華街かも分からない瞬きは美しかった。地形の関係で海もないのに海風が強く吹くこの場所は、景色が美しくとも足を運ぶ者は少ない。

 テラスの手すりにもたれている早瀬未沙の後ろ姿は、遠くを見るように前を向いてはいるが、その肩はあまりに細く頼りなさ気で … 。強い風に晒されているのは、とても寒そうだ思う。


 輝がそっと近づくと、風に流れた小さな声 ――


・ ―― お化粧がっ ―― 崩れちゃう、じゃない

哀し ・・・ 哀し ・・・


「 早瀬大尉 …… 」
「 ―― あなた、彼等を置いて来たの? 」
「 あいつ等には、後で僕の所に来るよう言ってます。だから ――
「 私の事は、放っておいて下さい 」
「 でも ・・・ 泣いて ――
「 泣いてなんかないわ。ヘンな事言わないで 」


 いつものように背筋を伸ばして彼女が振り返った時、その目に涙はなかった。

「 何故、私が泣くの? 私は彼等に、上官として、言うべき事を言っただけです 」
「 だけど ・・・ 君は泣いてるじゃないか 」
「 泣いてない。私は、こんな事で傷付いたりなんかしない 」
「 そんな …… 」
「 私は、軍人です 」


 早瀬未沙はそう言うと、さっと輝の横を通り過ぎて去って行く。輝はヒールの音が遠ざかってゆくのを、ただ背中で聞いている事しかできなかった。

「 でも、泣いてたじゃないか …… 」


かなし かなし ・・・


 輝を見据えていた彼女の顔は照明の下に露わにされ、目の下はファンデーションで覆われている周囲より透明感があった。“ 冷血漢 ” と言われた女性ひとは、化粧の崩れを気にしながら泣くのだ ―― そんな早瀬未沙の、どこが女じゃないのだろうか。

「 目が、真っ赤 ・・・ だったじゃないか …… 」


 そう言う輝の目もまた、赤くなっていた。人間には本当に、精神感応やテレパシーと言うような能力が備わっているのかもしれない。

「 こんなに ・・・ 胸が、痛いじゃないかっ! 」


 輝は自分の胸を押さえた。早瀬未沙の気持ちが、自分の心の中に流れているのが分かる。それを取り込んで渦巻く気持ちが、何かは分からないけれども。 多分、それはひとつじゃないけれども。

その気持ちを、もし長年の付き合いだったフォッカーが言い表すとしたら ――


『 そいつはなぁ、輝。 愛ってヤツだよ 』


 愛には色々な形があれど、その本質は同じだ。普通なら目を背けるであろう、他人の悲しみや苦しみという負の感情。それすら、自分の手の中に入れておきたいのだとしたら ―― 。それ等から、自分が護ってやりたいと思うのだとしたら ――


かな し と云ふ心


―― 地球で巡り会った2人の間に結ばれたのは、愛なのだろう。

「 どうして、そんなに … っ、我慢するんだ! 」


『 馬鹿だな、輝。 ただ抱きしめてやれば、女は泣けるのに 』


輝の耳に語るのはただ風だけで、フォッカーの言葉は届かなかった。

終わり

あとがき
くっ、苦しい … 。シリアスって、疲れますね。マックス&ミリア(ネタ要員)だけが、私を癒します。

SS「喪失」でフォッカーが未沙に言いたかった事は、中年の先輩2人とドーソン ・ ミハイロフ両准尉(ダレだソレのオリジナル)が表わしてくれました。ふっー、やっと伏線を拾えた。

効率よく殺す
の感覚は、田中芳樹氏「銀河英雄伝説」など辺りからだと思います(手元にないので未確認)。こういう点に見識や思想がおありの方がご覧になって、御不快でしたらすみません。私も余りこういう言葉は使いたくないのですが、未沙の苦悩や姿勢を出したいと思いまして。

愛しい心

 愛とは崇高なものから、恋愛、欲望に至るまで様々な意味で用いられる概念である。日本の古語においては、「かなし」という音に「愛」の文字を当て、「かなし」とも書き、相手を「いとおしい」「かわいい」と思う気持ち、守りたい思いを抱くさま、を意味した。
フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」参照


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 Comment 

Re: 効率的な・・・ 

敦賀谷バボ様、こんにちは (^^)

ホント輝って・・・
口下手かと思えば、ズケズケで妙に饒舌な時もありますよねー。 

効率的な殺しかた
「最少の被害で、最大のダメージを」みたいなのを聞いた事があります。結局「戦争である以上、犠牲は当たり前」と言う事なのでしょうね・・・。

ご訪問&コメントを、ありがとうございます! お蔭さまで更新停止状態にもに関わらず、ブログの過疎化なく存続しております。 e-68「では~」

効率的な・・・ 

輝の あぼ~ん! 普段が口下手などもり な癖に
しかも ズケズケ特攻隊長なのに
焦げなときに、饒舌すんなぁ

効率的な殺しかた
部隊の しんがり ケツ持ち 此れは 余程の腕利きやないと させてもらえないんよ
条件が いかなる状況で有っても 友軍の背中を取らせない事 被害を最小限度か それ以下に食い止める事 最悪は孤立してでも完全離脱するまで耐え抜いて敵の足留め または追撃不能にまで痛手を与える事ですねんにょ
先攻より ケツ持ちは 生存率悪す (ギャランは良かったけどね)

これは、また面白いネタを! 

教えて頂き、ありがとうございます。「あら助かる」という感じで、全然気にならないタチです(気にしろって)。

マクロスタイムズ人生相談コーナー
「年下の男性士官との恋に悩む某女性士官 (仮M・H)」


「彼自身が未成熟なため自分の心と体が彼女を求めていることにおそらくは気づいていない」って、またまたイイコトおっしゃる。「未沙が押し倒す」って、刺激的な妄想です(いつかSSでやってみたい)。「一日も早く○○○した方がよい」って、輝に言ってやって下さい。彼にフォッカーのように身近な大人の男性がいたら、第二部も「マクロスグラフィティー」のような流れになっていたかもしれませんね(メガ・ロード出航前に、輝&未沙家族とマックス&ミリア家族が仲良く一緒している)。

興奮し過ぎないよう、一日ネかせてレスさせて頂きました(それでもアリアリと興奮してるe-351)。では。

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マクロスタイムズに興味津々です 

早速情報を下さり、ありがとうございます。追加収録を楽しみにしております。そちらのシステム、すごくいいですね。画面の感じも綺麗で素敵です。

マクロス正史
いい例えですね~。事実を見ると情報源毎に矛盾があったりしますが、そこに流れる心情や要素等を読み取る事が楽しいですね。

SSについて
お褒め頂き、ありがとうございます。「萌Getやった!」です。天才夫婦は周りなど気にせず、飄々として我が道を往くノリでいて欲しいです。「彼らも・名もなきキャラもいての、マクロス世界」だと思っています。うれしいコメントをありがとうございました。

伏せコメについて
頂いたコメは記事欄に「このコメントは管理人のみ閲覧できます」とのみ表示されているので、伏せられているようです。今回されたように「管理者にだけ表示を許可する」をチェックされれば伏せられます。レス内容を「誰か分からないように配慮して欲しい」という意味でしょうか?伏せコメは全てそのつもりですので、大丈夫ですよe-68 伏せていない方のみ、レスにお名前を書かせて頂いております。ちょっとズレて捉えていたらすみません。

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