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「SS (二次創作小説)」
Macross IF

すれ違う時の果てに

 前作SS「寒い夜」を書いて、「After と来たら次は If でしょ?」と思い、チャレンジしました。設定は「36話でカムジンの攻撃がなく、輝と未沙が別れていたら」です。

フォールドの時間経過の設定が、オリジナルと逆になっています

時間経過速度: 地球 > フォールド艦 → 地球 < フォールド艦



2012.10.7 UP


 今日は月に1度の情報交換の日で、与えられた時間は30分間だ。輝は前回から今日までの1ヶ月間、未沙と話す内容を考えない日はなかった。毎日心の中で、彼女と会話していた気がする。

 しかし先程、メガ・ロード護衛隊長のマックスとの会談で聞いた話に、その全てが吹き飛んだ。


『 お久し振りね、一条少佐 』
「 久し振りです、早瀬大佐 」

 真っ暗な個室。コンソールの計器やボタンがほの白く光る中、未沙の落ち着いた声が響いた。先月話したばかりだが、当たり前のように毎日会っていた日々に比べれば、本当に久し振りだ。ましては彼女の方では、1年振り。フォールド航行の影響で、地球とメガ・ロードでは時間の流れが十数倍違う。

 未沙はもうすぐ30歳を迎えるはずだが、以前よりしっとりとした美しさをまとうようになった。

 メガ・ロードが居住可能な星を探索する方法は、先々で広範囲に計測して可能性がありそうな星の当たりを付け、接近して詳細に調査するという物だ。時間の進行はフォールドの頻度や距離により異なるが、そう都合が良い星があるはずも無く。計測とフォールドを繰り返す、というパターンがほとんどである。そのため地球での1ヶ月間は、概ねメガ・ロードでの1年間に相当した。

 “ 移民船支援室 ” の輝と移民船団の艦長である未沙が、こうして定期の情報交換をするのは、既に5回を超えた。本来の輝は現場志向だが、何故に内勤が多い支援室に志願したのかと言えば、この時間の為だった。



『 前回頂いた案件は、後ほど担当より説明します 』
「 はい 」

 未沙は昔から短時間で会議が済むよう、事前に資料を用意して出席者に目を通させていた。それは今も相変わらず、徹底されていて ・・・ 。輝は短い時間で終わらされてしまう このひと時が、ひどく寂しい。いくら親しい話をしたくとも未沙は隙を見せてはくれず、それ以上強くは出られなかった。


 しかし今日は、そうはさせない。彼女の口から聞きたくないが、彼女からでなくては信じたくなかった。

「 未沙。マックスに聞いたんだ。 ・・・ け ・・ ん ・・・ するんだって? 」
『 ―― ええ。来月ね 』

 輝は “ 結婚けっこん の4文字が、どうしても言えなかった ―― 未沙には結局、1度も言えなかった言葉。


「 そう ・・・ 」
『 あなたは? 』
「 え・・・? 」
『 あなたは、まだしないの? 』
「 ・・・ しないよ 」

 「そんな事を、君が聞くのか?」と言う資格は、無かった。本意ではなかったとは言え、未沙を手放したのは自分だ。


『 ダメよ、女の子を待たせちゃ 』
「 ・・・・・・・ 」

―― どうしてあの頃、その言葉を俺に言ってくれなかったんだ。
――どうして、誰も。何も、言ってくれなかったのだ ・・・!


『 ミンメイさん、きっと心待ちにしてるわ 』
「 ミンメイとは、そんなんじゃない 」
『 え? だって ・・・ 』
「 そんなんじゃ、ない! 」

 輝は「本当は君も、待っていてくれたんだね」という言葉を飲み込んで、絶対に否定しなければならない事を言っておく。ミンメイは、結局歌手に戻った。あの歌う為に生まれたような子が、歌から離れて生きられる訳がないのだ。初めて恋した日から恋が終わった後も、そんな事は分かっていた事だった。あの頃も今も、自分にとって彼女は “ 守らねばならない存在 ” ―― 妹のようなものだ。

 輝はもう、女性を知らない訳ではなかった。未沙がいなくなってから、寂しさを埋める為、自分や未沙に対する怒りを鎮める為に、何人もの女性と肌を重ねた。自分がこんな心ない行為に及ぶとは、想像もしなかった。

 しかし、ミンメイだけはそんな対象にする気はない。それがミンメイへの愛だし、何より未沙への愛だった。


 フォールド通信士からの、無粋な連絡が入る。


時間です。通信を終了します


「 未沙、幸せに ・・・ 」

 輝の一言を最後に、通信が切れた。結婚など、して欲しくない。本当は「他の男となんか、幸せにならないで」 と、言いたい ・・・ 。でも未沙には幸せになって欲しいし、彼女が「一条君は優しい」と言ってくれたから。今でも自分はそういう男だと、思っていて欲しいから ・・・ 。





『 今日でお別れです 』
「 え・・・? 」

 未沙に別れを切り出されるのは、これが2度目だった。だから分かる。彼女は本気だ。

『 私は艦長を降ります 』
「 なんで ・・・ 」

 将軍クラスの定年は70歳で、未沙はまだ10年は先のはずだ。輝はコンソールに両手を着いて勢い良く立ち上がり、真っ黒な画面に身を乗り出す。しばらく前から、未沙は画像を送らないようにしてしまっていた。


「 なんでだよ、未沙! 」
『 ・・・ 艦長とお呼びなさい。一条少佐 』

 あの頃仕事中に囁かれた密やかな甘い言葉は、もう無機質で ・・・ 。


「 なんでだって、聞いてるんだっ! 」

 輝はその声音の理由わけが分かるから、ただ駄駄っ子のように抵抗するより他ない。そんな甘えた感情が未沙に伝わったのか、


『 もう大人でしょ ・・・ ? 確かに私は、あなたのお母さんみたいな ――
「 違うっ! 」

―― そんな慈しむような目で、声で。諭そうとなんて、しないでくれ!


 輝にはそれが余計に、悔しくて切なくて ・・・。

『 それどころか、おばあ ――
「 違う! ちがうっ! ―― ねえ、顔見せてくれよ 」
『 それは ・・・ 』
「 顔を見せて、本当のことを教えてくれ 」
『 ・・・・・・ 』
「 なんでなんだよ? なんで、最後 ・・・? 」


時間です。通信を ――


「 うるさいっ! 今、大事なところなんだ! 」


し、失礼しました!  ブツッ


「 本当に最後なら、顔を見せて? ―― もう、未沙の顔を思い出せないんだ ・・・! 」
『 輝 ・・・ 』
「 忘れたくない 」

 未沙にも忘れたくない、忘れて欲しくない人がいる。遠い過去にも1人いたし、今も目の前にいる。数秒後に輝の前の画面が明るくなり、少し年をとった未沙が映った。


『 恥ずかしいわ。こんな ・・・ 』
「 ―― 変わらないよ 」
『 ひどいわ。忘れたなんて、ウソついたのね 』
「 綺麗だ 」
『 ウソよ。こんな おばあちゃん 』
「 未沙は、今でも綺麗だよ 」
『 うん、もう ・・・ 』

 未沙はもう60歳近いが、相変わらず拗ねた時の口調は可愛らしい。輝はかつて少しだけ触れた、彼女の頬に手を伸ばす ―― 何となく、予感がしたのかも知れない。固く冷たい画面の感触でもいい。今 確かに存在する未沙を、感じたかった。


『 ズルイわ。そんなコト、1度も言ってくれなかったクセに 』
「 これからは何度でも言うよ。綺麗だ、未沙 」
『 ・・・ あなたと話せるのは、今日で最後よ 』
「 そんなのダメだ! なんでだよ ・・・ ぉ 」

 輝は未沙にすがりつくように、画面に顔を近付けた。未沙が見る画面に、泣きそうな彼の顔が大きく映る。未沙は輝のこんな顔を見せられると、弱いのだ。悩んで決めた考えも、想いも。全てを無にして、言うことを聞いてしまう。


『 病気なの ―― もう、長くはないわ 』
「 そん、な ・・・ 」
『 だから あなたとは、これで最後 』
「 嫌だ ・・・ ッ! 」
『 お願い。これ以上ひどい顔、見せたくないの 』
「 未沙は、どんな顔も綺麗だ 」
『 食事も摂れないのよ? もっと痩せちゃうわ 』
「 どんな顔の未沙でも、俺は見たい 」
『 まあ ・・・ 。主人と同じこと、言うのね 』


 輝は画面の未沙の頬に自分の頬を押し付け、留めきれない言葉を告げた。

「 好きだ、未沙 ・・・ ! 俺の方がソイツより、ずっと、何倍も! 」
『 ―― ホント、そんな事1度も言ってくれなかったのにね 』
「 だって、未沙が結婚なんかするから。だから、俺 ・・・ 」
『 私もあなたが好き ・・・ だったわ 』

 輝が知る限り、未沙は正直で、そして誠実な人だったから。夫がある彼女の、精一杯の告白。輝の頭が、固い画面をずり落ちてゆく。


『 ・・・ もうすぐ、新しい星に移民が始まるの 』

 この時、メガ・ロードはまだ宇宙を旅していた。未沙は胸の高さにある輝の髪を撫でるように、届かない指先で滑らかな画面をなぞり、遠い目をしながらづぶやいた。

『 私も、土に還れるかしら 』
「 未沙、頼む。そんな事、言わないで ・・・ 」


 輝は顔を上げて未沙を見詰め、映し出された彼女の指を取るように画面をひっ掻く。搾り出すような声を上げるかつての恋人に、未沙は穏やかな目を向けた。

『 最後に皆 連れて行けたんだから、私もナカナカのものね 』
「 ・・・・・・ 」
『 お父様もお母様も、きっと褒めて下さるわ ―― いつも願ってた 』
「 ・・・・・・ 」
『 あなたも、褒めてくれる? 』
「 ―― ああ、上出来だ。さすが未沙だよ 」
『 ふふふ。うれし 』
「 未沙じゃなきゃ、できない 」


 未沙は満足したように小さく息をついて、輝の頭をいだくように寄せていた体を、画面から離した。

『 ちょっぴり長く、宇宙を漂い過ぎたわ 』
「 未沙 ・・・ !? やだよ 」
『 もう休みたいの。これだけ頑張ったんなら、いいんじゃない? 』


 輝は未沙から離れまいとするように画面に手を付きながら彼女を見つめ、ただ首を振るしかできなかった。あの頃から3年たって一人前のつもりでも、相変わらずこの人の前の自分は口下手だ ―― 俺はまたそれで、彼女を失うのか ・・・ ?

「 俺は未沙と、まだ6年しか居ないんだよ ・・・? 」
『 ふふ、お忘れ? 私には40年近いわ 』

 未沙の顔には、確かに隠しようもない年輪が刻まれていた。年の割には目立たないが、高解析の画面に大映しでは流石に分かる。それでも、そのひとつひとつすら輝には愛おしかった ―― 本来なら共に刻まれるはずだった、時のあかし ・・・ 。


『 貴方と私は、距離も時間も離れてるけど ・・・ 』
「 未沙っ! 」

 彼女が通信終了のボタンを押そうとする動きが見え、輝は引き止めようと画面にすがる。

『 そんな事が関係ない所で、待ってるわ 』
「 未沙 ・・・ 、 未沙 ・・・ ッ! 」
『 ずっと待ってる。約束よ 』


―― ああ ・・・ 。君は、あの頃と変らない

 “ 指きり ” なんて少女めいた事をする、小さな桜貝の指先も。上手く言い訳もできずに待たせた俺を、ちょっと顔をしかめながら結局許してくれた、優しい笑顔も。


「 絶対に行くよ ・・・ あの時みたいに 」
『 今度もちゃんと、お仕事してから来てね? 』
「 もちろんさ。未沙は任務に厳しいから 」
『 命令違反は、営巣入りよ♪ ・・・ さよなら、輝! 』


ツ ーーー ・・・


―― 忘れない。この生のく先に、永遠があるのだから


 輝が愛した、その時々の想いで色を変える、不変のヘイゼルの瞳を。


―― 生涯、忘れない

おわり

あとがき
輝がヘタレで、甘ったれで、子供っぽい。カムジンの襲撃がなくても、2人は多分ちゃんと納まっていたと思います。「なら何で別れた?」という、理由は聞かないで下さい 「思い付きませ~ん」 年齢もフォールド同様、話の都合で設定しております。

未沙の瞳の色を今回は「ヘイゼル」にしましたが、いかがでしょうか。言葉面も優しくていいですし、光の加減によって色が変わるという神秘的な感じが素敵だと思いました。

「プライベート・タイム」を書きながらこれを書き、ウサ を晴らす ―― あ、失礼。ウサ違い。
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 Comment 

Re: 「こんなに泣ける」様 

びえり様、こんばんは (^^)

泣いちゃって参っちゃって下さったとは、嬉しいです。
切ない系、大好物です、いかに輝と未沙を可哀想に描くか、燃えます(笑)

NoTitle 

とても素敵なお話で感動しました。
真面目にSSでこんなに泣けるお話があるとは思いませんでした。
切なくて切なくて、参っております。

Re: 初めまして 

ご来訪と初コメントを頂き、ありがとうございます。「反応」とは「レス」かと思いましたが、お伝えしたい点もありレスさせて頂きました。

本来は輝の方が先に年をとる
物理学的にはそうなんですね v-219「なるほど!」  数十年後の彼の或るラストが頭にあるので、可能ならいずれ書かせて頂くかも知れません。でも「若い未沙と、年をとった輝」は、難題ですねぇ。そういう男性心理は私には未知で、でも小説としては定番で書き甲斐あるテーマです。リクに上手く応える自信はありませんが、SS神が降りて下されば盛り込みたく思います (^^)

輝と未沙の再会
他にも そのお話を伺いましたが、皆様ロマンティックですねぇ 小説設定に関する私の志向は「会えんモノは、会えん」というシビア路線なので、そちらは盛り込めないかも知れません…。唯一妄想している再会系話は かーなーり イタイくて、ちょっと出せないです e-351

寒いですねー! 何某様もご自愛下さいませ e-68「では」

管理人のみ閲覧できます 

このコメントは管理人のみ閲覧できます

10/11 9:48 拍手鍵コメ様へ 

♪ それも愛 きっと愛 e-349

私も「輝が可哀想なのは萌える」です。必死に未沙を追う輝 ・・・ 本編ではグッバイ・ガールと36話くらいで、モロ「好きだー!」系は皆無。未練タラタラで未沙を追いかける輝、を見たかったのです。

「輝結婚、未沙一人&未沙未練」 ・・・ ホント、逆なら耐えられない。増してや相手がミンメイなら、「キーーッ!」とハンカチ噛み切る(別にミンメイ嫌いではないですが)。

別れネタ&死にネタと自分でもチヤレンジャーだと思いましたが、書いてよかったです。こういうルートも有り得るんだよ、と輝には心して未沙を大事にして欲しい。2人の関係って、第二部見てれば輝次第でどっちにも転びましたよね。本編はメデタシ・メデタシ、という事でよかったです。

10/10 22:03 の拍手鍵コメ様へ 

「未沙の結婚は輝を諦めさせるための狂言」
そういう優しさも、未沙にはアリかもしれませんね。まだ若いかつての恋人(私の中ではアノ第二部の前から、2人は恋人)を、どんどん年をとっていく未沙はどう見詰めてきたか ・・・。恐らく残された輝以上に、切ない想いがあったろうと思います。昔以上に、年長者として振舞おうとするでしょうね。ヒカミサの純情を信じたロマンティックな考えを、どうもありがとうございますe-259

誤字のお知らせをありがとうございます。早速直し ・・・ ア~レ~?まだあるー!と、自分のウカツさに苦笑。

10/7 21:44 拍手鍵コメ様へ 

「とっても」を頂いて、すごく嬉しかったです。(いつもですが)何度もコメントを拝見しました。がんばります!v-91

馬鹿だからまた自分で書いて、また自分で泣きベソをかいてましたe-446 おハズカシ・・・。
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